【行政書士が解説】相続シリーズ第10回|遺産分割協議の進め方|揉めないための実務ポイントを徹底解説

相続のトラブルは、以下のケースがあります。

「遺産分割協議のやり方がわからない」

「話し合いが進まず時間だけが過ぎる」

遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合う大切なプロセスですが、進め方を誤ると争いの火種になります。

この記事では、行政書士が実務で使う“揉めにくい進め方”を最新法令に基づき整理しました。

後半には、Q&Aと1問クイズもありますので実務と知識の両方が身につく内容になっています。


🧭 1. 遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の配分を話し合い、合意内容を「遺産分割協議書」にまとめる手続きです。

✔ 法律上の根拠:民法907条

✔ 合意は 全員一致が必須です

✔ 合意内容は「法律で決まっているわけではない」=話し合いで自由に決められます

参考:(遺産の分割の協議又は審判)
第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定

により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をす

ることができる。


🧭 2. 協議前に必ずやるべき“5つの準備”

① 相続人の確定(戸籍収集)

→ 何より最優先に。1人でも漏れたら無効になる。

② 相続財産の確定

→ 通帳、証券、保険、不動産の登記事項証明書など。

 不明なものは調査(行政書士がサポート可能)。

③ 評価額の把握

→ 不動産は固定資産税評価額or不動産会社の査定。

 預貯金は残高証明。株式は取引残高報告。

④ 相続人の意向ヒアリング(事前アンケート)

→ 言いにくい本音を早めに把握する。

⑤ 争点になりそうな項目の洗い出し

→ 特別受益、寄与分(第9話)の確認。

【行政書士が解説】特別受益と寄与分をわかりやすく解説|もめない相続の基礎知識(第9回)

相続の相談でよく出てくるのが「生前にあの子だけ援助されていた」「私だけ長年介護してきたのに評価されないの?」という“特別受益”と“寄与分”の問題です。 これらは民法…


🧭 3. 揉めやすいポイント(典型例)

✔ 金融資産の取り分

相続人で平等に分けるのか、管理していた人に多めか。

✔ 不動産をどうするか

  • 相続人の1人が住み続ける
  • 売却して現金化する
  • 共有にする(おすすめしません)

✔ 特別受益・寄与分

「生前援助」や「介護の貢献」の扱い。

✔ 1人だけ連絡が取れない

協議が進まず長年放置される原因に。


🧭 4. 遺産分割協議の進め方(時系列まとめ)


ステップ①:事前準備(最重要)

相続人の確定・財産調査・争点整理。

行政書士が最もサポートできる部分です。


ステップ②:話し合い開始

電話・Zoom・対面・メールすべて利用してOK。

形式のルールはありません。


ステップ③:案の作成(たたき台)

分割案を複数作り、選択肢を提示する方法がもめません。


ステップ④:合意→遺産分割協議書

内容

  • 各財産の配分
  • 取得者
  • 実行方法
  • 日付と署名押印(実印を推奨します。法務局や金融機関から印鑑証明書を求められるため)

※不動産の名義変更は司法書士の業務
(行政書士は協議書作成までお手伝いできます)


ステップ⑤:実行(名義変更・払戻し)

銀行→行政書士
登記→司法書士
相続税申告→税理士


🧭 5. 遺産分割協議書の基本構成(行政書士版)

  1. 表題
  2. 相続人一覧(住所・氏名)
  3. 被相続人の情報
  4. 各財産の具体的な取得者
  5. 銀行払戻し・不動産の扱い
  6. 付記
  7. 日付
  8. 相続人全員の署名押印

実印+印鑑証明書が望ましい(法務局や金融機関から印鑑証明書を求められるため)


🧭 6. 行政書士ができること・できないこと

✔ 行政書士ができること

  • 戸籍収集
  • 財産目録の作成
  • 協議書のドラフト作成
  • 特別受益・寄与分の整理
  • 家族の意向調整の補助
  • 銀行相続手続きのサポート(委任)

✔ 行政書士ができないこと

  • 不動産の相続登記(司法書士)
  • 相続税の申告(税理士)
  • 調停での代理(弁護士)

🧭 7. よくある質問(Q&A)

Q1. 1人だけ協議に応じない相続人がいる場合は?

→ 話し合いが成立しない場合は家庭裁判所の「調停」へ(弁護士の業務)。

Q2. 協議書は手書きでもいい?

→ 問題なし。Word・PDF作成が一般的です。

Q3. 郵送だけで協議書をまとめることもできる?

→ もちろん可能。実務でも、遠方の相続人から郵送でやり取りすることがあります。

Q4. LINEやメールで「OK」と言っただけでも有効?

→ 口頭合意は原則有効だが、証拠として弱いです。

必ず書面(協議書)を作成すべき。

⭕️✖️クイズ

【○✖️クイズ】遺産分割協議は多数決で決めても良い?

答え:✖️(バツ)

遺産分割協議は相続人全員の合意=全会一致が必要です。 民法907条により、1人でも不参加・反対がいれば協議は成立しません。

🧭 9. 次回予告(第11話)

第11話:遺産分割協議書の実例と作り方(行政書士が使う雛形公開)

  • 実際の書式構成
  • 文言の注意点
  • 不動産・預金で文言が違う理由
  • 相続人が多いケースの工夫

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