行政書士が解説:任意後見制度とは?老後の不安に備える仕組みをやさしく解説(第17話)

「判断能力が低下してきたらどうしたらいいのか?」
多くの方が抱える不安です。
そんなときに役立つ制度が 任意後見制度(任意後見契約)。
これは、将来判断能力が低下したときの代理人(任意後見人)を元気なうちに決めておける制度です。
この記事では、制度のしくみ・手続き・費用・成年後見制度との違いを行政書士の視点でわかりやすく解説します。
🟦 1. 任意後見制度とは?(制度の概要)
📌 民法第643条・任意後見契約に関する法律に基づく制度。
本人(契約者)が判断能力があるうちに、信頼できる人と契約し、将来、支援が必要になった時に代理権が発生する仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約時点 | 本人の判断能力が 十分ある状態 |
| 発動タイミング | 認知症や障害等で判断能力が低下したとき |
| 必要手続き | 公証役場で「任意後見契約公正証書」を作成 |
| 任意後見監督人 | 家庭裁判所が選任(監督機能あり) |
🟦 2. 成年後見制度との違い(比較で理解)
| 項目 | 任意後見制度 | 法定成年後見制度 |
|---|---|---|
| 開始時期 | 判断能力があるうちに契約 | すでに判断能力が低下した後 |
| 後見人 | 本人が選ぶ | 家庭裁判所が選ぶ |
| 主な資産の使い道 | 予防・備え | 緊急・発生後対応 |
| 後見監督人 | 必ず必要 | 必要に応じて |
👉 「備える制度」=任意後見、「すでに困っている状態に対応」=法定後見
🟦 3. 手続きの流れ(実務フロー)
📌 行政書士は契約内容整理・書類作成サポート・説明が中心
📌 公正証書作成は公証役場へ
📌 発動後の監督人選任申立は家庭裁判所へ
相談 → 内容設計 → 任意後見契約(公証役場) → 保管 → 判断能力低下 →
家庭裁判所へ監督人選任申立 → 任意後見開始
🟦 4. 任意後見契約でできること
✔ 預貯金管理
✔ 介護契約・施設入居手続き
✔ 税金・公共料金支払い
✔ 役所手続き
✔ 各種契約更新・解約
🚫 法律行為のうち以下は司法書士・弁護士領域
- 不動産登記申請
- 争訟手続き
🟦 5. 費用の目安
| 項目 | 相場 |
|---|---|
| 公正証書作成費用など任意後見サポート | 100,000円〜200,000円程度 |
| 証明書取得費など | 数千円〜 |
| 後見人報酬 | 月2万円〜3万円程度(契約で決定) |
| 監督人報酬(開始後) | 月1万円〜3万円程度(裁判所判断) |
※費用については、財産状況や地域差などがあります。
🟦 6. 向いている人・向かない人
🟩 向いている人
- 一人暮らしの高齢者
- 相続争いを未然に防ぎたい人
- 誰に財産管理を任せるか自分で決めたい人
🟥 向かないケース
- すでに判断能力が十分でない場合
(→ 法定成年後見制度の検討)
🟦 Q&A:よくある質問
Q1. 家族でも任意後見人になれますか?
→ 可能です。ただし、公平性確保のために後見監督人は原則第三者(専門職)になります。
Q2. 一度契約したら変更できませんか?
→ 判断能力があるうちは変更・解除可能です。
Q3. 任意後見契約だけ作って発動しない人もいますか?
→ います。「備えとして作っておく」こと自体が安心材料になります。
🟦 ✏️ 1問○✖️クイズ(HTMLコピペ用)
Q. 任意後見契約は本人が認知症になってから契約できる。
🟦 まとめ
- 任意後見制度は「将来への備え」として設計する制度
- 家庭裁判所の監督下で行われるため安心性が高い
- 判断能力があるうちにしか契約できないため、早めの検討が重要です
🔗 次回予告
👉 第18話:「エンディングノートと遺言の違い」
—書かないリスクと、残す価値—
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🕊 任意後見制度は「元気なうちにしか使えない制度」です。
判断能力が落ちてからでは契約できません。
「家族に迷惑をかけたくない」「老後のことを今のうちに整えておきたい」
そんな方は早めの相談がおすすめです。


