【行政書士が解説】エンディングノートと遺言書の違い|書いておきたいこと・法的効力・上手な使い分け方【保存版】第18話

「エンディングノートを書けば、遺言はいらないですか?」
相続・終活の相談で伺うことがあります。
結論から言いますと
- エンディングノート:想い・情報を伝えるための“ノート”(法的効力なし)
- 遺言書:財産の分け方などを指定できる法的文書(条件を満たせば法的効力あり)
という役割の違う二つのツールです。
この記事では
- エンディングノートと遺言書の違い
- それぞれに書いておくべき内容
- どちらから準備すべきか
- 上手な組み合わせ方
を行政書士の視点からやさしく整理します。
1. エンディングノートとは?法律上の位置づけ
1-1 法律に基づく制度ではない「自由なノート」
エンディングノートは、法律で形式や内容が定められた文書ではありません。
- 市販のノート
- 自作のノート
- パソコンやクラウド上のメモ
など形式は自由です。
書く内容の例:
- 自分史・家族へのメッセージ
- 交友関係・連絡先リスト
- SNS・ネット銀行などのID・パスワードの管理方針
- 延命治療・介護についての希望
- 葬儀やお墓の希望 など
👉 「大切な人に自分のこと・考えを残すノート」というイメージです。
1-2 エンディングノートの限界(ここが大事)
エンディングノートには、法的効力がありません。
- 「長男にはこの家を相続させたい」と書いても、相続の場面では遺産分割協議で決まることになります
- 財産の分け方を一方的に拘束することはできない
つまり
✅ 気持ち・考え・想いを伝える
❌ 財産の分け方を法的に決める
という役割の違いを押さえておくことが大切です。
2. 遺言書とは?法的効力を持つ「最後の意思表示」
2-1 民法で定められた「方式付きの最終意思」
遺言書は、民法で方式が定められた法的な文書です。
主な種類:
- 自筆証書遺言(原則全文自書/方式の緩和あり)
- 公正証書遺言(公証人が作成)
- 秘密証書遺言 など
条件を満たすと
- 誰に・何を・どれくらい相続させるか
- 遺産分割方法の指定
- 遺言執行者の指定
といった内容が法律上尊重されます。
👉 特に公正証書遺言は
- 紛失・改ざんリスクが低い
- 家庭裁判所の「検認」が不要
という点で実務上利便性が高い方式です。
2-2 遺言書でできることの代表例
- 財産の具体的な分け方を指定する
- 配偶者や特定の子に多めに残したいときの配分を指定
- 特定の人に感謝の気持ちとして遺贈する
- 行政書士・弁護士などを遺言執行者に指定する
など相続の「ルール」を自分で決められるのが大きな特徴です。
3. 比較でわかる「エンディングノート」と「遺言」の違い
| 項目 | エンディングノート | 遺言書 |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし | あり(要件を満たせば) |
| 形式 | 自由 | 民法で方式が決まっている |
| 主な内容 | 気持ち・希望・情報 | 財産の承継・法的効果のある指示 |
| 作成方法 | 自由記載 | 方式に沿った作成が必要 |
| 修正 | いつでも自由に書き直し可 | 新しい遺言で前の遺言を撤回する形が基本 |
| 主な役割 | 家族へのメッセージ・備忘録 | 相続のルールを決める文書 |
👉 よくある誤解:
「エンディングノートを書いたから、遺言書はいらない」
これは NG です。
財産の分け方を決めたいなら、遺言書が必須になります。
4. どちらから書けばいい?おすすめのステップ
ステップ①:エンディングノートで「頭と気持ちを整理」
いきなり遺言を書こうとすると
- 何から書いていけばいいか分からない
- 財産や家族に対する気持ちが整理できていない
という壁に当たることが多いです。
そこでまず
- 家族への感謝や心配事
- 財産のリスト(不動産・預貯金・保険など)
- 誰に何を託したいかのイメージ
をエンディングノートに書き出すことで、自分の中の「答えの種」を見つけることができると思います。
ステップ②:本当に法的に残したい部分を「遺言」にする
エンディングノートで整理した内容の中で
- 法的に確実に実現したいこと
- 相続トラブルの火種になりそうな部分
については、遺言書として正式な形にしておくのがおすすめです。
例:
- 家業を継ぐ長男に会社の株式を集中させる
- 介護を担ってくれた子に多めに財産を残す
- 再婚家庭・前妻の子がいるなどの家族関係が複雑なケース
👉 このような場合は「エンディングノートだけ」ではトラブルになりやすいです。
5. 行政書士に相談するメリット
- 財産の内容・家族構成を整理するサポート
- どこまでをエンディングノートで、どこからを遺言で残すか一緒に考えられる
- 公証役場との連携(公正証書遺言書の作成サポート)
- 相続発生後に遺言に基づいた遺産分割協議書の作成支援
👉 「遺言を書かなければ」と気負う前にまずは現状の整理とどんな形が合うかの相談からでもOKです。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. エンディングノートだけではダメですか?
→ 財産の分け方に関しては、遺言書がないと法的拘束力がありません。
ご家族仲が良く、財産も少ない場合はノートだけで足りることもあります(ただし、そのような家族ほど相続で揉めるケースがあります)。
不動産がある・相続人が複数いる・再婚家庭などの場合は、遺言書の検討をおすすめします。
Q2. 先に遺言だけ作って、エンディングノートはなくてもいい?
→ 可能ですが
- 日常の連絡先
- 交友関係
- お葬式の希望
- デジタル遺品の情報
など遺言には書きにくい部分を補う意味でエンディングノートもあるとご家族が助かります。
Q3. エンディングノートに「この内容で遺産分割してほしい」と書けば、尊重されますか?
→ 法的拘束力はありませんが、家族がその内容を尊重して遺産分割協議を行うことは可能です。
ただし、相続人の誰かが強く反対した場合には、その通りにならない可能性が高いです。
Q4. 遺言書と内容が違うエンディングノートを書いてしまったら?
→ 遺言書の内容が優先されると考えてください。
エンディングノートを書くときは、遺言の内容との整合性にも注意しましょう。
7. ○✖️クイズ(クリックで答えが出ます)
Q. エンディングノートに財産の分け方を書いておけば、遺言書と同じように法的な効力がある。
8. まとめ
まとめポイント
- エンディングノート:想いと情報を残すノート(法的効力なし)
- 遺言書:財産の分け方などを決める法的文書
- まずはエンディングノートで頭と気持ちを整理 する→ 本当に必要な部分を遺言書へしたためる
- 家族構成や財産状況によって、必要な対策は変わります
「エンディングノートと遺言書、何から始めたらいいか分からない…」
そんな方も多いと思います。
当事務所では、現状の整理から一緒に行い「エンディングノート+遺言」のバランスを考えた終活サポートを行っています。


