経営業務の管理責任者等(経管)を徹底解説|建設業許可で最初に確認すべき要件【第4話】

建設業許可で最初につまずきやすいのが、経営業務の管理責任者等(以下、経管)の選定です。
「職人歴は長いのに通らない」「経験はあるはずなのに証明できない」――このような場合があります。
経管のポイントはシンプル。
経験があるかどうかではなく、要件を満たす経験を書類で証明できるかにかかってきます。
この記事では、一般建設業許可をメインとして「経管」を最新の用語・運用に沿ってわかりやすく整理します。
経営業務の管理責任者等(経管)とは何か
経営業務の管理責任者等とは、簡単に言うと建設業の経営(事業運営)に一定期間、責任を持って関与してきた人が常勤でいることを求められる要件です。
ここでいう「経営」とは、現場作業ではなく、たとえば次のような領域です。
- 工事の受注・契約・見積・入札
- 資金繰り、外注費・人件費の管理
- 技術者・技能者の配置
- 下請契約や協力会社管理
- クレーム・瑕疵対応、工程・安全の統括 など
つまり
現場の経験(施工の腕)=営業所技術者等
経営の経験(事業運営)=経営業務の管理責任者等という分類になります。
経管(経営業務の管理責任者等)で認められる代表的なパターン
実務で認定されるルートをまずは大枠で押さえていきます。
※年数や細部は、立場・経験内容・証明書類の組み合わせで判断されます(各都道府県の手引で運用の差あります)。
会社の役員として建設業の経営に一定期間関与していた
典型的には、建設業者の役員(取締役等)として、建設業の経営に関与していたことを登記や実態資料で示します。
注意点
- “名前だけ役員”は不可(実態が重要です)
- 役員期間が確認できたとしても、建設業の経営関与ができないと説明が弱くなる
個人事業主として建設業を一定期間経営していた
法人でなくても、個人事業主として建設業を継続していれば対象になります。
ただし、審査で「建設業を本当に営んでいたか」を資料で証明する必要があります。
よく使われる証明資料の例
- 開業届・確定申告書の控え
- 工事請負契約書や注文書、請書
- 請求書や領収書、入金記録
- 工事写真や見積書、工事台帳 など
経営に準ずる地位(支店長・営業所長等)で一定期間関与していた
「役員ではないが、実質的に経営に近い立場で動いていた」ケースです。
ポイント
- 肩書ではなく「権限」と「職務内容」が重視される
- 契約や受注判断、資金・人員配置、下請契約などに関与していたことを説明できるか
「職人経験が長い=経管になれる」は誤解
ここが重要です。
- 大工歴20年
- 現場の段取りを任されていた
- 後輩指導をしていた
これらは技術・技能の経験としては強いですが、経管は経営経験を求める要件なので、職人経験だけで経管になれるとは限りません。
「経管はダメだけど、営業所技術者等なら要件を満たせる」というケースは実務であります(次回以降で解説します)。
経管で否認されやすい典型パターン
名義だけ役員で実態が薄い
登記に名前があっても、建設業の経営に関与した説明や資料が弱いと通りません。
建設業以外の経営経験しかない
飲食・運送など他業種の経営経験だけでは、原則として建設業の経管経験になりません。
証明資料が揃わない
「やっていたはず」では足りず、契約や請求書、申告などの客観資料で積み上げていくことが必要です。
期間の切り方・立証の組み立てが弱い
同じ経歴でも「どの期間を」「どの立場で」「どの資料で」を示すかによって結果が変わります。
経管の証明に使われる書類(チェックリスト)
申請実務でよく出る資料を、整理しておきます。
- 履歴事項全部証明書(役員在任期間の確認)
- 事業年度の確定申告書・決算書
- 工事請負契約書や注文書、請書
- 請求書や領収書、通帳入金記録
- 職務権限や業務分掌(支店長等の場合)
- 工事台帳や見積書、施工体制台帳(案件による)
- 会社案内や組織図(補強資料) など
※各自治体によって「この組み合わせが必須」という運用があるため、最終的には申請先の手引に合わせましょう。
経管が選定が微妙な場合の現実的な選択肢
経管の選定が微妙な場合でも諦める必要はありません。
- 経管要件を満たす方を役員として迎える
- 経管要件を満たすまでの期間を逆算して、先に体制整備を進める
- 事業形態・役員構成・権限設計を見直して、実態と証明を一致させる
「許可が取れない」ではなく、今の体制で取れるかや体制をどう作れば取れるかを確認することが重要です。
よくある質問(Q&A)
経営業務の管理責任者等は、代表者でないといけませんか?
代表者である必要はありません。
役員等で要件を満たす方がいれば足ります。
経管と営業所技術者等は、同一人物が兼ねられますか?
要件を両方満たすなら兼任できるケースがあります。
ただし「常勤性」「実態」「他社兼務の有無」などの要件を崩さない設計が必要です。
経管の経験が途切れています。通算で考えられますか?
通算で評価される場面もありますが、空白期間の説明と資料の積み上げが重要です。
各自治体への運用確認が必須です。
○✖クイズ|経管の勘違いチェック(1問)
Q.
Aさんは、建設会社で20年間職人として勤務して現場の段取りや後輩指導もしていた。
ただし、契約・受注判断・資金繰り・下請契約などの経営判断に関与したことはない。
この場合にAさんは経営業務の管理責任者等(経管)として認められる。
まとめ|第4話の結論
- 経管は「建設業の経営経験」が必要な要件に
- 職人経験が長くても、経管とは別の評価(=営業所技術者等の領域になることが)
- 経管は「実態と証明資料」で決まる
- 迷う場合は、申請前に経歴・資料を整理して通る組み立てを作ることが大切
経管が通るか不安な方へ(許可の“最初の壁”を一緒に整理します)
「自分の経歴は経管に当たるのか」
「どの書類で証明すればいいのか」
「不足している場合、現実的にどう組めばよいか」
経管は、自己判断で進めるほど遠回りになりやすい要件です。
行政書士として申請先の運用も踏まえて、要件該当性の確認から必要書類の組み立てまでサポートします。
- 経管の該当性診断
- 証明資料の洗い出し
- 不足がある場合の代替案・体制設計
- 許可取得までの進め方(スケジュール整理)
次回予告
【第5話】営業所技術者等(旧:専任技術者)を徹底解説
資格・実務経験・一般/特定の違い・常勤性・兼務ルールまでわかりやすく整理します


