【行政書士が解説】負担付遺贈・死因贈与でペットを守る方法― 遺言と契約の違い、選び方、つまずきポイントまで (第2話)

第1話のおさらい:ペットは相続人になれない
ペットは、法律上「人」ではないため相続人になれません。
その結果「ペットに財産を相続させる/遺贈する」という書き方はできず、世話をしてくれる人に財産を渡して、その代わりに飼育をお願いする設計が現実的になります。
ペットは相続できない?飼い主のもしもの時に起こる「法律の現実」と3つのリスク(第1話)
「もし私が先に死んだら、この子はどうなるんだろう」 家族の一員であるペットと暮らしていると、こんな不安が頭をよぎることがあると思います。 一人暮らしでペットを飼…
そこで出番になるのが、次の2つです。
- 負担付遺贈(遺言)
- 負担付死因贈与(契約)
1. 負担付遺贈とは(遺言で「財産+飼育義務」をセットにする)
負担付遺贈は、遺言で「この財産をあなたに渡します。その代わりにペットを終生飼育してください」と義務(負担)を付けて財産を渡す方法です。
法律上のポイント
- 受遺者(財産をもらう人)は、遺贈の価額を超えない範囲で負担を負います(民法1002条の考え方)。
- 遺贈は、受遺者が放棄できるため、事前の受遺者の了承が極めて重要です。
- 遺言は、生前いつでも撤回・変更が可能です(民法1022条)。
参考:(負担付遺贈)
第千二条 負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
向いている人
- まずはシンプルに備えたい人
- 相手が「家族・親しい友人」で合意を取りやすい人
- 信託ほどの設計は不要だが、“義務”は明確にしたい人
2. 死因贈与とは(契約で「合意」を固める)
死因贈与は「私が亡くなったら、この財産をあなたにあげる」という契約です。
民法554条では、性質に反しない限り遺贈の規定が準用されるという取り扱いがされています。
ペット終活では、これを負担付(ペットの飼育が条件)で組むことで、合意ベースで約束を固められます。
参考:(死因贈与)
第五百五十四条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
向いている人
- 「口約束じゃ不安だ。相手と合意して形にしたい」人
- 相手が親族ではない第三者と合意することを重視したい人
- 条件や費用の使い方を丁寧に決めたい人
3. いちばん大事:負担付遺贈 vs 死因贈与(選び方)
ここが一番知りたい所だと思いますので表で整理します。
| 比較ポイント | 負担付遺贈(遺言) | 負担付死因贈与(契約) |
|---|---|---|
| 性質 | 一方的(遺言者の意思) | 双方合意(契約) |
| 変更 | 生前いつでも変更しやすい(撤回自由) | 原則「合意」が前提になりやすい(契約) |
| 相手の納得感 | 事前承諾がないと揉めやすい | 合意の時点で納得感を作りやすい |
| 実務で大事なところ | 遺言執行者を置く/チェック設計 | 契約条項の作り込み/執行・手続き設計作り |
(遺言の撤回自由や死因贈与の性質・準用については民法1022条・554条の整理が前提です。)
4. 失敗する設計に共通する3つの落とし穴
落とし穴①:相手の生活事情を無視した設計
ペット飼育可能な住宅か/他の家族の同意があるか/ペットアレルギー有無/仕事に負担がかかる。
「引き受けたい気持ち」と「現実に飼えるか」は別問題です。
落とし穴②:お金の設計が雑すぎる
医療費・介護・ペットフード・保険・火葬等、ペットにかかる費用は想定以上になることも。
「生活費として月◯円」「医療費は上限◯円」などルール化が必要です。
落とし穴③:チェック機能がない
理想は「やってくれるはず」でも、日々引き取った人の人生は変わっていきます。
負担付遺贈なら信頼できる人を遺言執行者に選任することができます。
5. 実際に使える「条項設計」サンプル
飼育義務(負担)の具体化
- 終生飼育(ペットの食事・散歩・健康管理・通院・医療費負担)
- 居住環境(室内飼い/多頭不可など)
- 高齢期のケア(介護・治療方針の優先順位)
お金の使い方
- 飼育費:月◯円を上限に
- 医療費:上限◯円/重大疾患時の判断基準
- ペットが先に亡くなった場合の残額の帰属(残金を誰へ/寄付等)
Q&A(第2話)
Q1. 負担付遺贈なら、必ずペットを飼ってもらえますか?
A. 受遺者が遺贈を放棄する可能性があるため、事前承諾と現実的な負担設計が重要です。
Q2. 死因贈与は遺言より強いですか?
A. 契約なので合意を作りやすい一方で、契約ならではの設計・運用(条項の作り込み、手続き面の整理)が大切です。
民法上も死因贈与は遺贈規定を準用する整理があります。
Q3. “お金だけ渡す”のはダメ?
A. 義務が明文化されないと、使途が担保されにくい。
ペットのためなら義務+使途ルールをセットで設計すれば安心です。
Q4. 遺言は後から変えられますか?
A. 可能です。遺言は方式に従って、いつでも全部または一部を撤回できます(民法1022条)。
1問○✖️クイズ
遺言は方式に従えば、いつでも全部または一部を撤回(変更)できます。
遺言は“最終意思”なので、生前なら方式に従って変更できます。
行政書士ができること(第2話の結論)
- どの制度が合うかの整理(遺言/契約/信託)
- 負担(義務)と財産のバランス設計(民法1002条の“価額の範囲”も意識)
- 公正証書化の段取り(公証役場の文案調整など)
- 付随書類(引継ノート・緊急カード)まで含めた運用設計のお手伝い
👉長野県飯田市でペット終活のご相談はこちら
次回予告(第3話)
ペット信託とは?
「世話をする人」と「お金を管理する人」を分けて、長期管理に強い仕組みをわかりやすく解説します。


