第3回:技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国)

日本で「専門的・技術的なホワイトカラー職」に就く外国人の中心的な在留資格が
「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)です。

エンジニア、経理、人事、翻訳、デザイン、マーケティングなど――
外国人が企業で働く多くのケースは、この資格に該当します。

この記事では、令和6〜7年の最新の入管運用を踏まえて
押さえるべき要件・必要書類・不許可リスクを体系的に整理します。


🏛 技人国ビザの基本と対象範囲

「技術・人文知識・国際業務」とは、入管法別表第一に定められた在留資格の一つで
次のような活動を対象としています。

本邦の公私の機関との契約に基づき
自然科学または人文科学の専門知識または
外国の文化に基づく思考・感受性を必要とする業務に従事すること。(抜粋)

主な該当職種例

分野職種例
技術系(自然科学)システムエンジニア、設計技術者、製造技術者など
人文知識系経理、人事、法務、マーケティング、企画、通訳・翻訳など
国際業務系貿易実務、海外営業、デザイン、語学教育、文化紹介など

単純労働(清掃、接客中心、レジ業務など)は対象外です。
審査では、「業務内容が専門性を要するか」が厳しくチェックされます。


📋 許可要件の3本柱

要件内容補足
① 学歴または実務経験大学卒業(専攻と業務の関連が必要)
または10年以上の実務経験
国際業務分野は3年以上で可(翻訳・語学指導等は大学卒で免除)
② 報酬(給与)要件日本人と同等額以上の報酬があること職務・地域水準に照らし妥当であること
③ 受入機関の安定性会社が継続的に事業を行っていること上場・中小・新設会社の「カテゴリー1〜4」で資料が異なる

✅ ポイント
「業務内容 × 学歴/実務の関連性」を証明できるかどうかが合否を左右します。
職務記述書(JD)で“専門知識をどう使うか”を具体的に説明しましょう。


🗂 必要書類(主な例)

共通書類

  • 申請書
  • 写真(4×3cm)
  • パスポート・在留カード
  • 卒業証明書・成績証明書
  • 職務経歴証明書
  • 雇用契約書または労働条件通知書
  • 職務内容説明書(日本語)

企業側書類

  • 登記事項証明書
  • 決算書(直近1期分)
  • 会社概要・パンフレット
  • 法定調書合計表(カテゴリー判定用)

※上場企業や大企業(カテゴリー1・2)は一部省略可。
新設企業(カテゴリー4)は事業実体の資料を多く求められます。


🔁 手続の流れ

1️⃣ 海外から新規採用する場合

  1. 雇用契約締結
  2. 在留資格認定証明書(COE)申請
  3. COE交付後、外国人本人が在外公館でビザ申請
  4. 入国・在留カード交付

2️⃣ 日本国内での変更(例:留学→技人国)

  1. 在留資格変更許可申請
  2. 学歴・業務内容・報酬を立証
  3. 許可後に在留カードが新しい資格で交付

3️⃣ 期間更新

  • 同一企業・同一業務で継続勤務する場合
  • 満了日の3か月前から申請可

⚠️ 不許可になりやすい3つのパターン

パターン原因対応策
学歴と業務の関連性が薄い専攻内容と実務内容が乖離職務説明書で「知識活用の具体例」を記載
単純労働が主接客・清掃中心と判断される専門業務を主軸にし、単純作業は補助的と説明
会社の実体が不十分売上・従業員・実績不足決算・契約書・事業計画で補強

💡 ケース別ポイント

✅ 留学生の就職

  • 「専攻との関連性」「給与の妥当性」「職務水準」が確認対象。
  • 入管庁の「留学生の就職に関する取扱い」ガイドに基づいて
    “学んだ内容を業務にどう活かすか”を説明できる書類が重要。

✅ 派遣・請負の場合

  • 実際の勤務先の業務内容・指揮命令関係が明確であること。
  • 契約書と職務記述書に整合性を持たせる。

✅ ホテル・観光業

  • 単なる接客業務では不可。
  • 「外国語対応」「海外顧客向け販路拡大」「企画・広報」など
    専門性のある業務として設計する。

💬 Q&A(よくある質問)

Q1. 大卒であればどんな仕事でも申請できますか?
→ いいえ。専攻と業務内容の関連性が重視されます。
 例:経済学専攻で経理職はOK、調理補助はNG。

Q2. 新設会社でも雇用可能ですか?
→ 可能ですが、事業実体を立証する資料(契約書、事業計画、資金証明など)が必要です。

Q3. 派遣社員としての就労は認められますか?
→ 条件付きで可能。派遣先での職務内容・指揮命令系統が明確であることが前提です。

Q4. 給与額の基準は?
→ 一律基準はありませんが日本人と同等額以上であることが原則です。

Q5. アルバイトや副業はできますか?
→ 在留資格の範囲外での報酬活動は、資格外活動許可が必要です。


🧭 まとめ

  • 「技術・人文知識・国際業務」はホワイトカラー系就労ビザの中心的存在。
  • 許可・不許可は「学歴・実務の関連性」「報酬水準」「企業の安定性」で決まる。
  • 不許可リスクを防ぐには、職務説明書や契約内容を専門性の観点で一貫性ある形に整理する。
  • 制度改正が頻繁ですので、最新の入管庁公表資料を確認することが大切。

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