第21話|建設業の「積算・見積り」完全ガイド|労務費の出し方と利益が残る原価管理【2026年版】

「見積りを出して受注しても、終わってみたら手元にお金が残らない」と建設業の開業初期に多い失敗です。
国交省資料でも労務費・材料費等の内訳を明示した見積書を作り、下請から提出された内訳明示見積を 考慮・尊重する流れが昨今では明確になっています。
つまり、今はおおまかな見積よりも根拠のある内訳型見積が強い(=勝てる)時代です。
結論:見積りで外す会社の共通点
次のどれかにあてはまると赤字化しやすくなります。
- 労務費を「日当×人数×日数」で雑に計算する(段取り・手待ち・移動・安全・片付けが抜ける)
- 法定福利費や安全衛生費をどこかに入っているはずで消してしまう(実は入っていない)
- 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等を薄く見積もる(現場が回るほど赤字)
- 追加変更が出ても金額合意前に着手して、回収不能になる(第19話で解説⬇️)
第19話|資材高騰・設計変更で揉めない契約術|価格交渉の型と証拠の残し方【2026年版】
開業したてや小規模の建設業者は、契約変更で利益が吹き飛ぶことがあります。 見積提出後に資材が急騰した 施主の要望で仕様が変わった(でも追加が通らない) 施工条件が…
「労務費」は何を根拠にすればいいのか?
開業当初迷うのがここです。
公共工事の世界での基準の一つ:公共工事設計労務単価
国交省は 、令和8年3月適用の公共工事設計労務単価を2026年2月に公表しています。
この労務単価は、基本給相当額・手当・賞与等・実物給与などで構成され、法定福利費相当額も反映されています⬇️。
令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について
~今回の引き上げにより、14年連続の上昇~
民間工事の見積でも「労務費を薄く出しすぎない」ための目線として参考になります(そのまま転用するのではなく、考え方の基準として)。
積算(見積り)の全体像:工事原価はこう作る
見積りは、次の構造にすると崩れにくいです。
- 直接工事費(材料費・労務費・外注費 など)
- 共通仮設費(現場の仮設・共通の段取り)
- 現場管理費(現場運営・管理にかかる費用)
- 一般管理費等(会社を回す費用+利益の源泉)
公共工事の基準でも、共通費を「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費等」に区分することが明記されています。
失敗しない労務費の出し方 5ステップ
ステップ1:職種を分ける(大工・土工・配管・電工・・)
同じ職人扱いにしてしまうと単価も歩掛(作業量の数値化)も崩れてしまいます。
公共の労務単価も職種別で整理されています。
ステップ2:作業日数を「純作業」と「付帯作業」に分ける
純作業:施工そのもの
付帯作業:搬入・養生・段取り・清掃・片付け・安全・打合せ・検査立会
→ 付帯を入れないと、現場が回れば回るほど赤字化していきます。
ステップ3:労務費を日当ではなく、人工(にんく)で
人工=人×日。
ここに、現場条件(狭小・夜間・搬入制限・遠方)で補正をかけていきます。
ステップ4:法定福利費を「別枠」で見える化していく
国交省の単価自体も法定福利費相当額を反映しており、見積りの内訳も明示する方向です。
→ 見える化しておくと、価格交渉があっても崩れにくい。
ステップ5:安全衛生・段取り費を必ず入れる
ここを削ると、結局として「現場管理費」で食われていきます。
(結果として管理が弱くなり、事故・手戻り・クレームが増える原因に)
見積り内訳は説明できる形にする(2025年12月施行の流れ)
国交省の説明資料では、元請・下請・発注者に対して
- 労務費、材料費等の内訳を明示した見積書を作る
- 下請からの内訳明示見積の内容を考慮・尊重するといった方向性に整理されています。
つまり、これからは「総額だけの見積」より「内訳で納得させられる見積」が重要視されます。
経営者向け:利益が残る会社の原価ルール3つ
- 受注前に「最低粗利ライン」を決める(ライン割れの工事は受けない)
- 工事ごとに原価予算を切る(材料・労務・外注・共通費)
- 追加変更は、合意前着手を例外扱いすること
よくあるQ&A
Q1. 公共工事の設計労務単価を民間見積に使っていい?
A. そのまま転用するのではなく、薄く見積もらないための目線として使うことが効果的です。
国交省公表の単価は職種別・都道府県別で整理され、法定福利費相当額も反映されています。
Q2. 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等は結局どれくらいかかる?
A. 工事規模・工期・現場条件で変わります。
少なくとも「共通費は3区分で考える」という整理(公共建築の基準)を踏まえて、会社の実績で率を固めるのが正攻法です。
Q3. 下請から内訳付き見積りが来たら、必ず応じる?
A. 必ず応じる必要はありませんが、内訳明示見積を「考慮・尊重」する方向性が示されています。
削るなら、どこをどう削るかを説明できるようにして交渉してください。
1問○✖クイズ
Q. 見積で「材料費+職人日当」だけ押さえておけば、共通仮設費や現場管理費は現場の工夫でなんとかなるので入れなくても問題ない。
まとめ
- 労務費は、雑に日当だけで計算すると赤字化しやすい
- 国交省の最新・公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)は、法定福利費相当額も反映されます
- 共通費は「共通仮設費・現場管理費・一般管理費等」で分けて考えると計算が崩れにくい
- 見積は内訳明示・尊重の方向に進んでおり、それを説明できる見積りが強いです
見積りは、受注のためだけではなく、会社を守るための防衛線にもなります。
- 利益が残る見積りの型を作りたい
- 労務費・法定福利費・共通費をどう入れればよいか不安
- 内訳明示見積りのテンプレを作り、価格交渉まで仕組み化していきたい
- 赤字案件の見分け方(受けない基準)を作りたい
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