🏛 第7回:就労ビザ申請に必要な書類リストと作成の流れ

COE・在留資格変更・在留期間更新の3ルート完全ガイド+提出セット構成例【最新版】
外国人を雇用したい、または留学生が日本で働きたい──
そんな時に必要なのが「就労ビザ」(正確には「在留資格」)です。
でも
「どんな書類を出せばいいの?」
「在留資格認定証明書(COE)・変更・更新の違いがよくわからない…。」
という声が非常に多いです。
この記事では、行政書士の実務手順と入管庁の最新ガイドライン(令和6年版)をもとに
就労ビザ申請の全体像・必要書類・提出の流れをはじめての方にもわかりやすく整理しました。
1️⃣ 3つの申請ルートをまず理解しよう
| 申請ルート | 主なケース | 概要 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書(COE) | 海外在住の外国人を新規採用 | 受入企業が日本の入管に「COE」を申請。交付後に本人が在外公館でビザ取得→入国。 |
| 在留資格変更 | 日本国内で活動が変わる場合(例:留学→就労) | 本人が入管で変更許可申請。手数料6,000円(オンラインは5,500円)。 |
| 在留期間更新 | 同じ活動を続ける場合 | 在留期間満了の約3か月前から申請可能。手数料は上記と同じ。 |
💡 豆知識
2025年4月以降、変更・更新の手数料は窓口6,000円/オンライン5,500円に統一されました。
2️⃣ 共通の本人側書類(基礎セット)
| 書類名 | 主な内容 |
|---|---|
| 申請書(最新版) | COE/変更/更新のいずれか。入管庁HPで入手可能。 |
| 写真(4×3cm) | 6か月以内撮影、背景無地、正面。 |
| パスポート・在留カード | 原本提示。コピー添付可。 |
| 学位証明書・成績証明書 | または職歴証明書で実務経験を証明。 |
| 履歴書・職務経歴書 | 専門性・職務の関連性を説明。 |
| 雇用契約書/労働条件通知書 | 就労条件・報酬を明記。 |
| 職務内容説明書(JD) | 専門業務と補助業務の比率を示す(後述テンプレあり)。 |
3️⃣ 会社側(所属機関)書類一覧
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 発行3か月以内。法人番号入り。 |
| 会社案内・組織図 | 実態説明資料。 |
| 決算書類 | 新設の場合は事業計画書・契約書・受注書で代替。 |
| 法定調書合計表 | 源泉徴収税額で“カテゴリ1〜4”を判定。 |
| 社会保険加入証明・36協定届 | 労働法適合性の証拠。 |
💡 カテゴリ別の特徴
- カテゴリ1(上場・国機関等):省略可能書類多め。
- カテゴリ2(中堅企業):法定調書で確認。
- カテゴリ3・4:資料厚め。特に新設企業は「実体証明」が重要。
4️⃣ 申請フローを3ルートで整理
【A】在留資格認定証明書(COE)(海外採用ルート)
- 雇用契約締結
- 受入企業がCOE申請
- COE交付(2~3か月目安)
- 外国人が在外公館で査証申請
- 入国・在留カード交付
【B】在留資格変更(例:留学→就労)
- 変更要件を確認(該当性・基準適合性・相当性)
- 関連書類を準備(JD/契約書/決算資料)
- 変更許可申請
- 許可 → 新在留カード交付
【C】在留期間更新(継続)
- 満了の約90日前から申請可
- 活動継続・条件同一を証明
- 許可 → 新カード交付
5️⃣ 申請書類セットの構成例
📂 技術・人文知識・国際業務/在留資格変更 申請書類セット
1. 在留資格変更許可申請書(最新版)
2. 写真貼付台紙(4×3cm)
3. 本人確認資料:パスポート・在留カード
4. 学歴・職歴証明(卒業証明書/成績証明書/職歴証明)
5. 雇用契約書(労働条件通知書)
6. 職務内容説明書(JD)【テンプレあり】
7. 会社資料:登記簿・決算書・会社案内
8. 法定調書合計表(カテゴリ判定用)
9. 組織図・就業規則・36協定届(任意添付)
10. 資格外活動許可の写し(該当者)
6️⃣ 審査で見られる3つの観点(入管の判断軸)
| 判断軸 | 内容 | 審査官の視点 |
|---|---|---|
| 該当性 | 活動内容が資格に該当しているか | 「単純労働」中心でないか? |
| 基準適合性 | 学歴・経験・報酬が法定基準を満たすか | 日本人と同等以上か? |
| 相当性 | 活動実態・素行・義務履行 | 遵法性・継続性があるか? |
✅ 書類の並べ順を「該当性→基準→相当性」に揃えると、審査官に“理屈が伝わる構成”になります。
7️⃣ よくある不備と解決策
| 不備 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 職務内容説明書(JD)が抽象的 | 専門業務が具体化されていない | タスク×知識を1対1で書く(例:SQL→分析レポート作成) |
| 給与根拠が薄い | 相場比較なし | 同業種・地域相場や日本人比較を添付 |
| 会社が新設 | 決算なし | 契約書・受注書・資金計画書で実体補強 |
| 留学生の変更 | 出席・成績不備 | 成績証明・28時間遵守ログを添付 |
8️⃣ 付録テンプレート集
📄 職務内容説明書(JD)テンプレ
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 職種 | 翻訳・通訳業務(国際業務) |
| 主な業務内容 | 海外取引先との契約書翻訳、マニュアル作成支援 |
| 活用する専門知識 | 英語学・国際ビジネス知識 |
| 非専門業務 | 書類整理・来客対応など |
| 業務比率 | 専門業務80%/補助業務20% |
| 指揮命令系統 | 国際事業部マネージャー配下 |
| 雇用形態・報酬 | 正社員・月給30万円(同職日本人と同等) |
📊 学歴・実務の関連性マップ
| 学位/職歴 | 関連業務 | 活用スキル |
|---|---|---|
| 外国語学部英語学科卒 | 契約書翻訳 | 英語文書理解 |
| 前職:商社勤務3年 | 通訳・貿易書類対応 | 貿易実務知識 |
| 現職:翻訳担当 | 海外顧客との交渉 | 多文化理解力 |
📈 業務比率表(主従関係)
| 業務 | 割合 | 区分 |
|---|---|---|
| 契約書翻訳 | 40% | 専門 |
| 通訳対応 | 30% | 専門 |
| マニュアル作成 | 20% | 専門 |
| 書類整理 | 10% | 補助 |
9️⃣ Q&A:よくある質問
Q1. 在留資格認定証明書(COE)と変更・更新の違いは?
→ COEは「これから入国する人」用、変更・更新は「すでに在留している人」用。
Q2. どんな順番で準備すればいい?
→ ①ルート判定 → ②JD作成 → ③会社カテゴリ確認 → ④書類収集。
Q3. 手数料はいくら?
→ 窓口6,000円/オンライン5,500円(令和6年度)。
Q4. JDで一番大事なのは?
→ 「専門知識を使う場面」と「業務比率(主従関係)」を明確にすること。
Q5. 審査に落ちたら再申請できる?
→ 可能。ただし、不許可理由書の内容を分析して補正することが必須(第6回参照)。
第6回:不許可になる主な理由5つ|入管の視点で考えてみる
なぜダメなのかを逆算で理解する ― 該当性・基準適合性・相当性の3軸から解説 在留資格申請が「不許可」になったとき、入管庁は感情ではなく明確な基準で判断しています。…
🔚 まとめ
就労ビザの審査は
「該当性」×「基準適合性」×「相当性」の三拍子。
書類を“順序よく筋を通して”並べれば審査官に伝わります。
行政書士としては、単なる書類代行ではなく――
申請者と企業を結ぶ「信頼の翻訳者」になること。
これが入管業務における真の専門性です。


