第10回:学びながら気づいた外国人支援のリアル

在留資格だけでは見えない。支援の現場と課題を考える【2025年最新版】
在留資格の制度や申請手続を学んでいく中で見えてきたものがあります。
それは「書類の向こう側にいる人の物語」です。
日本で働く・学ぶ・暮らす外国人が増えているなかで、支援の現場では制度と現実のギャップが少しずつ広がっています。
この記事では、2025年4月施行の法制度改正を踏まえて、外国人支援の現状・課題・そして行政書士にできることを整理します。
制度を学ぶ人も現場に関わる人もいっしょに「支援の本質」を考えるきっかけにしてほしい——そんな思いを込めてまとめてみました。
1️⃣ 外国人支援とは何か
外国人支援とは、「外国人が日本社会の中で安心して暮らし、働き、学べるように支える取り組み」の総称です。
法務省・出入国在留管理庁は、「共生社会の実現に向けた多面的支援」を基本方針としています。
支援の中心には3つの軸があります。
- 法的支援:在留資格・手続・権利のサポート(行政書士・弁護士等)
- 生活支援:住居・医療・教育・就労環境の整備(自治体・NPO等)
- 共生支援:文化・言語・地域コミュニティとの橋渡し
「外国人支援=制度ではなく人と人をつなぐ仕組み」
それが行政書士を含む支援者に求められる視点です。
2️⃣ 外国人支援の最新動向(2024〜2025年)
出入国在留管理庁による「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和7年度改訂版)」が2025年6月に一部改正。
より包括的な共生社会実現を目指して、生活・教育・就労支援の各分野が強化されていきます。
主な動向:
- 「特定技能制度」改正(2025年4月施行):届出義務や報告制度の明確化、自治体との連携強化、分野を追加。
- 「技能実習制度」から「育成就労制度」への移行(2025年度開始予定):転籍制限の見直しと人材育成重視への転換。
- FRESC(外国人在留支援センター)の全国拡充・オンライン相談の導入。
- 各自治体「多文化共生計画」の2025年度改定が進行中。
💬 背景:
在留外国人数は約395万人(令和7年6月時点)に達し、労働人口の約3.8%を占めます。
外国人材は「労働者」から「地域の仲間」へ——社会認識の転換が進んでいます。
3️⃣ 現場で起きている5つの課題
① 情報格差:制度情報が難解で多言語対応が不十分。
② 労働環境:長時間労働や賃金問題が一部業種で継続中。
③ 教育と子ども支援:自治体間で教育支援格差が大きい。
④ 医療・福祉アクセス:保険制度と通訳体制の遅れ。
⑤ 地域コミュニティ:文化・宗教の違いによる孤立感。
現場では「手続が終わってからが本当の支援」との声が多く、制度理解だけでなく生活の安心を支える継続的支援が求められています。
4️⃣ 支援のカギは「共生」と「ことば」
支援の質を決めるのは日々のコミュニケーションです。
通訳を置くだけでなく、やさしい日本語での説明力が必要です。
文化背景を理解して、誤解を防ぐ“文化通訳”の意識も欠かせません。
行政書士にとって「説明責任」は信頼への第一歩。
行政書士は、「制度の翻訳者」であり「文化の架け橋」として機能しています。
5️⃣ 行政書士にできる外国人支援の形
行政書士は、在留資格手続の入口と出口を結ぶ専門職。
「書類を作る人」から「共生をつくる人」へと役割が拡大しています。
| 分野 | 支援の方向性 |
|---|---|
| 入管・在留 | ビザ申請・変更・更新・永住などの法的サポート |
| 生活 | FRESC・自治体・NPOとの連携・紹介 |
| 企業支援 | 雇用企業への助言・労務環境改善提案 |
| 教育 | 留学生サポート・学校との協働体制づくり |
| コミュニティ | 地域日本語教室や多文化イベント支援 |
6️⃣ 外国人支援の未来——“制度から人へ”
制度改正だけでは、真の支援は実現しません。
必要なのは、人と人が関わり理解し合う社会の構築です。
「制度は人を守るためにある。けれども動かすのは“人のまなざし”だ。」
これからの行政書士に求められるのは、法的正確さ×共感力。
制度を学んで、実務を通じて心に寄り添う支援者を目指したいです。
7️⃣ Q&A
Q1. 外国人支援と入管業務の違いは?
→ 外国人支援は生活支援全般。入管業務は法的手続。両者が連携してこそ機能します。
Q2. 行政書士ができる範囲は?
→ 在留資格の申請取次、書類作成、制度案内など。弁護士法に抵触する代理行為は不可。
Q3. 支援のために今できることは?
→ 制度知識の更新や多文化理解の学習、地域ネットワークへの参加など。まず「理解しようとする姿勢」から始まります。
8️⃣ まとめ
外国人支援は、在留資格や法令だけでなく「暮らし」を見つめる仕事。
行政書士はその入口に立つ専門職です。
手続きの先にある人の物語を想像できること——
それが、本当の支援の第一歩です。
法を学んで、人を知り社会をつなぐ。
その積み重ねが「共に生きる社会」を支える力になります。
💬 お問い合わせは → きりゅう行政書士事務所(公式)


