【会社設立】定款の作り方と電子定款で節約する方法を行政書士がやさしく解説【第2回】

会社をつくるときに必ず作るのは「定款(ていかん)」です。
定款は、会社の基本ルールや事業内容をまとめた“会社の憲法”のようなもの。ここを間違えると許認可が取れなかったり、銀行口座の審査で止まったりすることもあります。
この記事では、
- 定款とはなに?
- 何を記載すればいいの?
- 電子定款とはなに?どうやって節約できるの?
- 行政書士はどこまでサポートしてくれるか?
という疑問を会社設立サポートの現場で使う考え方でやさしく整理してみます。
※公証役場での認証などの手続きは、会社法その他の関係法令に基づいて進みます。
会社法の要件は、現行ルールに準拠した内容で説明しています。
1. 定款とは?会社の「設計図」であって「許認可の土台」
定款は、会社の大枠を決める公式の文書です。会社法上、株式会社には必ず定款が必要とされており(いわゆる「絶対的記載事項」などが定められています)これが会社としてのスタート地点になります。
イメージでいうと
- 会社の名前(商号)
- 会社が何をやるか(事業目的)
- 本店はどこか(所在地)
- だれが会社を動かすのか(役員・機関設計)
- 出資はいくらか(資本金等)
これらの「会社の根っこになる部分」を紙や電子データで正式にまとめたものが定款です。
ポイントはここ👇
- 税務署や銀行は、定款を見て「この会社は何をする会社なのか」を判断します
- 一部業種では、営業許可や免許の審査で定款がチェックされます
(例:建設業、古物商、産業廃棄物収集運搬、飲食業など業種によっては事業目的の記載が重要になることがあります)
ですので「とりあえず書いとけばいい書類」ではありません。もし、トラブル起こったらそれを防ぐ“最初の安全装置”となるのです。
2. 定款に必ず書く5つの基本項目(ここを外すと認証に進まない)
定款には、会社の基礎になる項目を最低限入れる必要があります。代表的なのが次の5つです(株式会社のケースをベースに説明します)。
- 商号
会社名です。「株式会社〇〇」のように表記します。表記は全角・半角・記号なども一定ルールの範囲内で使用できます。
取引先や役所関係との関わりを考えると、読みにくい名前は避けたほうが無難です。 - 目的(事業内容)
この会社は、どんなビジネスをするのかを列挙します。ここが大事です。
許認可が必要な業種(建設業、古物商、産廃など)は、この目的が適切に書かれていない場合は許可申請の入口に入れないことがあります。 - 本店の所在地
会社の“本籍地”のようなもの。賃貸オフィス、賃貸自宅、レンタルオフィスでも基本的には可能です。ただし用途制限のある物件(住居専用物件なのに事務所登記NGなど)には注意しましょう。 - 資本金の額
スタート時にいくら会社に入れるか。あとで増やすことも減らすこともできるけど、最初の額は信用にも関係してきます。 - 発起人・役員などの体制
誰が始めるのか、誰が代表として意思決定するのか。後の会社設立の登記する内容ともつながります。
この5つは、言い換えると「あなたの会社は何者か」を証明する重要なパーツになります。
逆に言うと、ここがあいまいなままで定款を作るのは危険です。
✅会社法第27条で定款の絶対的記載事項が定められています。この5項目が記載されていない場合は、定款が無効となります。
(定款の記載又は記録事項)
第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
3. 電子定款とは?紙と何が違うの?なぜ節約になるの?
定款には、大きく分けて2つの形があります。
- 紙の定款(紙に押印したもの)
- 電子定款(PDF等の電子データに電子署名をつけたもの)
株式会社の定款は、公証役場で認証を受ける必要があります。
このとき「紙の定款」だと、印紙税(いわゆる収入印紙代)4万円がかかります。
一方で「電子定款」は印紙税が不要になりますので、ここが節約ポイントになります。
電子定款にするメリットは
- 余計な税金(印紙税)を払わなくていい
- 書類がデータで管理しやすい
- 公証役場とのやり取りもスムーズにできる
ということです。
行政書士は、この「電子定款でコストを下げる」サポートを行っています。
資本金を抑えてスタートする小規模法人・副業法人にとって、設立時のコストをできるだけ抑えることが運転資金の確保につながるので、メリットは大きいでしょう。
4. 公証役場での認証って何をするの?流れを知っておこう
株式会社の定款は、公証役場で「この内容で会社スタートしてOKです」というお墨付きをもらう必要があります。
(合同会社の場合は、公証役場での定款認証は不要です。これは株式会社との大きな違いのひとつです。)
基本的な流れはこんな感じ:
- 発起人と定款案を作る(事業目的・資本金・所在地などを確定させる)
- 電子定款の形に整える(電子署名など)
- 公証役場に事前確認をして、発起人に内容の問題がないかチェックしてもらう
- 公証人が最終的に内容を確認して正式に定款を認証する
- 認証済みの定款が戻ってくる
ここで内容に修正が入ることもあります。
特に事業目的の書き方が曖昧すぎたり、公益性に反する事業のように見えたり、株式や機関設計が法令に合っていなかったりするとストップがかかる場合があります。
ですので、定款は「形だけ整えばOK」ではなく「公証役場が認証できるレベル」に仕上げる必要があるということです。
5. 行政書士がチェックする“目的欄”の落とし穴
定款の「目的」は、会社が将来できる事業のカタログです。
ここが弱いと、あとで本当に困ります。
よくあるパターン:
- 「とりあえずコンサルって書いとけばいいですよね?」
→ ダメなときある。「どんなコンサル?」まで書けと言われることもある - 許認可が必要な業種をするのに関わらず、その業種に必要な言い回しが入っていない
→ 後から許可が出ないということも - 目的の種類を入れすぎて、銀行の口座審査で「結局何の会社かわからない」と判断されることも
→ 事業口座を開けない、入金先がない=事業のスタートが遅れることも
行政書士にとって「目的欄の設計」は、実は一番大事なポイントのひとつ。
なぜなら、これがズレるとあとで直す手間がかかるからです。
目的は、
- 今すぐやる事業
- 半年後〜1年以内に予定している事業
- 許認可で要件になる表現
このあたりを押さえて、必要かつ十分に入れます。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 定款って自分で作ってもいいんですか?
→ 作ること自体はできます。ただし、内容に不備があると公証役場で止まったり、あとで許認可が取れないことがあります。
特に「事業目的」の書き方は、専門的な言い回しが必要になることも多いので、ここだけ専門家に確認する方も多いです。
(行政書士にはその“目的欄の設計”の相談があります。)
Q2. 電子定款は自分でもできますか?
→ できますが、電子署名の準備や公証役場との事前調整などで最初は少しハードルが高いと感じる人が多いようです。行政書士など専門家がサポートすることで、印紙代相当のコスト削減と手続きの手間削減を同時に行えるのが一般的な運用です。
Q3. 合同会社だと定款の認証はいりませんか?
→ はい。合同会社は、公証役場での定款認証は不要です。それゆえにスピードとコスト面では有利なことが多いです。ただし「目的の書き方」を甘いと銀行口座の審査や業種によっては、許認可で詰まることは株式会社と同じです。
Q4. 会社名(商号)はあとから変えられますか?
→ 変更できます。ただし、変更登記が必要で費用かかります。最初の段階で、読みやすい・信用されやすい・業種に合う名前を検討することがおすすめです。
Q5. 許認可が必要な事業(建設業、古物商など)を予定している場合はどうすればいい?
→ 許認可の申請窓口で「定款にその事業目的がちゃんと書いてありますか?」と確認されることがあります。つまり、会社を作る前に許認可まで見据えた目的の設計が必要です。
「会社作ったあとに気づいた」になると出直しになるケースがあるので注意です。
7. まとめ(第2回のおさらい)
- 定款は「会社の憲法」。会社の基礎情報と事業範囲を公式に示す大事な書類
- 株式会社は定款を公証役場で認証する(合同会社は不要)
- 電子定款を使うことで、紙の定款よりコストを抑えられる
- 「事業目的」は、のちの許認可・銀行口座・信頼性に直結する超重要ポイント
- 定款作成の時点で専門家に一度確認しておくと、あとで出直しとなるケースを防げる
次回(第3回)は、実際の「設立書類のセット」と「登記までの流れ」を図解で整理します。
登記申請は司法書士が扱う分野になるので、どこから誰に頼むべきかをはっきりさせていきます。
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定款の「目的」や「許認可に通る表現」に不安がある方は、事前相談を受け付けています。
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