【行政書士が解説】行政書士が見た「もめないご家族」の共通点5つ|相続トラブルを減らす習慣(第19話)

相続の相談で同じような家族構成・財産でも
- スムーズに話がまとまる家族
- 些細なことから大きなトラブルに発展する家族
にはっきり分かれます。
「性格の相性」だけが理由ではありません。
重要なのは、日ごろのコミュニケーションや準備の仕方です。
この記事では、行政書士の視点から
- もめないご家族の共通点5つ
- 逆にトラブルになりやすいパターン
- 今日からできる簡単な習慣
を専門用語をできるだけ使わずに整理していきます。
1. もめるご家族・もめないご家族の違いって何?
1-1 よくある「もめるきっかけ」
相続の相談でよく聞くのはこんな言葉です。
- 「そんな話は聞いていない」
- 「自分だけ損している気がする」
- 「親が本当はどう思っていたのか分からない」
金額の多い・少ないよりも
「自分だけ知らされていなかった」
「不公平に扱われた」
という 感情面 が火種になることがほとんどです。
1-2 もめないご家族の特徴
一方でスムーズに話が進むご家族には
- 普段から話し合いの場がある
- 親の考えを家族がだいたい理解している
- 書類や情報が整理されている
という点が見られます。
2. 共通点① お金の話を「タブー」にしない
2-1 おおまかでも話している
もめない家族は、親がこんな話を子どもにある程度してくれています。
- 「不動産と預金がこれくらいある」
- 「保険は、この会社で加入して受取人はこうしている」
- 「この家は●●に継いでほしい」
細かい金額まで言わなくても、全体のイメージを共有しているかどうかで大きく違います。
2-2 タブーにすると「サプライズ相続」になる
一切お金の話をしてこなかったご家庭では
- 相続が始まって初めて財産を知る
- 生前の援助(学費・事業資金など)の差が不満になる
という「サプライズ相続」状態になり、疑心暗鬼が生まれやすい傾向があります。
3. 共通点② 親の意思を「ご家族で共有」している
3-1 遺言+軽い雑談くらいがちょうど良い
もめないご家族は
- 遺言書で法的な部分をきちんと決める
- 普段の会話で思いや背景を家族に伝える
この両方を大事にしています。
どう分けるかだけでなく、なぜそう考えたかを伝えているご家族は、結びつきが強いです。
3-2 兄弟姉妹間への配慮
- 介護を担った子どもに少し多めに残す
- 離れて暮らしている子にも配慮する
など不公平感をできるだけ減らす工夫をしているご家族は、話し合いも穏やかに進むことが多いです。
4. 共通点③ 名義と実態をそろえている
4-1 「名義だけ親」の財産が整理されている
トラブルになりやすい典型例が
- 実際は子がローンを払っているのに名義は親のまま
- 事業用口座にプライベートなお金が混ざっている
といったケースです。
もめないご家族は
- 住宅の名義
- 預貯金
- 事業用資産
など名義と実態をそろえている傾向があります。
4-2 生前贈与・名義変更は専門家と相談
名義を変えるときには
- 贈与税
- 登記の手続き
- 将来の相続への影響
などが関わってきます。
「なんとなく名義を変える」のではなく、税理士や司法書士・行政書士と連携しながら整理しているご家族はもめにくいです。
5. 共通点④ 情報が整理されている
5-1 どこに何があるのか、誰か一人は分かっている
もめないご家族では
- 通帳・保険証券・不動産の権利証などの保管場所
- ネット銀行や証券口座の情報
- ログインIDやパスワードの管理方針
を最低限誰か一人が把握していることが多いです。
最近は
- エンディングノート
- 情報カード
- クラウド型の終活サービス
などを使って整理する例も増えています。
5-2 情報がバラバラだと、疑いを生む
逆に情報が散らばっていると
- 「他にも財産があるのでは?」
- 「自分にだけ知らされていないのでは?」
といった不信感が生まれ、それがトラブルのきっかけになることも少なくありません。
6. 共通点⑤ 決められないときは「専門家を早めに入れる」
6-1 ご家族だけで抱え込まない
- 親子で話すと感情的になってしまう
- 兄弟だけで話すと昔の感情が出てくる
こうした状況であえて第三者(行政書士・税理士・司法書士など)を間に挟むご家族は、落ち着いて話が進んでいる印象があります。
6-2 専門家は「答えを押しつける人」ではない
専門家の役割は
- 法律上できること・できないことの整理
- いくつかの選択肢を見える化する
- 書面に落とし込む(遺言書・遺産分割協議書など)
をサポートすることです。
どの選択が正しいかは、最終的にはご家族で決めていただくことになります。
✅ 自分たちで話し合うための“土台”づくり。
これが、専門家がお役に立てるポイントです。
7. 今日からできる「もめない家族チェックリスト」
簡単なセルフチェックとして、
次の5つにどのくらい当てはまるか考えてみてください。
- 親の「お金の全体像」を、ご家族の誰かは大まかに知っている
- 親の希望(家を誰に残したいか 等)をなんとなく共有している
- 名義と実態が大きくズレている財産が少ない
- 通帳・保険・不動産の情報がどこにあるか、誰か一人は把握している
- 困ったら専門家に相談しようという共通認識がある
「3つ以上当てはまる」なら、“もめにくいご家族”に近いです。
💬 Q&A:よくある疑問
Q1. 家族同士で財産の話をするのが気まずいのですが…
→ いきなり細かい話をする必要はありません。
- 「この家はこうしてほしい」
- 「この預金は、葬儀費と当面の生活費に使ってほしい」
などざっくりした方向性を伝えるだけでも大きな一歩です。
Q2. 遺言があれば家族はもめませんか?
→ 遺言は非常に有効な手段ですが、内容や伝え方によってはトラブルになることもあります。
遺言(ルール)+普段のコミュニケーション(気持ち)
両方を整えていくことが理想です。
Q3. 何から手をつければいいか全く分かりません…
→ そんな方こそ、一度プロと一緒に“棚卸し”することをおすすめします。
- 財産の整理
- 家族構成の整理
- トラブルになりやすいポイントの洗い出し
などを一緒に行うことで、今やるべきことが見えてきます。
⭕✖️クイズ(クリックで答えが表示)
Q. 相続でトラブルになるかどうかは、財産の多さだけでほとんど決まる。
🏁 まとめ
もめないご家族には、日ごろからの「話し方」と「整理の仕方」に共通点がある
・お金の話を完全なタブーにしない
・親の意思を、遺言+日常会話で伝えていく
・名義と実態をそろえ、情報を整理しておく
・決めきれないときは、専門家を早めに入れる
「うちは大丈夫だと思うけれども少し不安もある…」
「親とお金の話をどう切り出せばいいか分からない…」
そんなときは、一度第三者を交えて整理してみませんか。
当事務所では、相続・遺言・終活の全体像を一緒に整理し、ご家族ごとに合った“もめないための準備”をサポートしています。


