【行政書士が解説】生命保険は相続財産になる?非課税枠・受取人・税金のルールを整理【保存版】(第16話)

相続の相談で出るのがこの質問です。

「生命保険は相続財産になるのですか?」

「非課税枠の『500万円×法定相続人』とはどういう意味ですか?」

生命保険は

  • 民法上は「原則として受取人固有の財産」
  • 相続税法上は「みなし相続財産(相続で取得したとみなして課税)」

という二つの側面があります。

この記事では

  • 生命保険と相続の基本的な考え方
  • 「500万円×法定相続人」という非課税枠の意味
  • 受取人のパターンによる違い
  • 請求の流れと時効
  • 行政書士にできること・税理士に任せるべきところ

をできるだけ専門用語をかみ砕いてまとめます。

※具体的な税額計算・シミュレーションは、税理士の業務領域になります。

この記事は、考え方を整理することが目的です。


1. 民法と税法での扱いの違いをざっくり整理

1-1 民法上:受取人固有の財産が原則

死亡保険金の契約内容は

  • 契約者:被相続人(亡くなった方)
  • 被保険者:被相続人
  • 受取人:配偶者や子ども

という形が一般的です。

この場合に民法上は「保険金を受け取る権利は、受取人個人の財産」として扱われます。

「原則として遺産分割の対象には含めない」というのが実務の基本です(もちろん、遺産分割協議上「含めて調整」する運用はあります)。


1-2 相続税法上:みなし相続財産として課税の対象に

一方、相続税法上では、被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金は「相続または遺贈により取得したものとみなす」=みなし相続財産として相続税の課税対象になります。

このときに登場するのが、みなさんもご存知の

「500万円 × 法定相続人の数」

という非課税枠です。

なぜ、民法上では受取人の固有資産の財産なのに、相続税法上はみなし相続財産となるのか?

それは、税金を課すことへの公平のためです。

このようにしないとすべての財産を生命保険金にかえて相続税の課税から免れようとしますよね。


2. 「500万円×法定相続人」の非課税枠とは?

国税庁のタックスアンサーでは、死亡保険金(みなし相続財産)の非課税限度額について次のように定めています。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

この非課税限度額までは、相続税の計算上「なかったもの」として扱われます。

2-1 具体例でイメージ

  • 相続人:配偶者+子ども2人(計3人)
  • 死亡保険金の合計:1,500万円(受取人は相続人)

この場合の非課税枠は

500万円 × 3人 = 1,500万円

となり、死亡保険金1,500万円はすべて非課税(相続税の課税価格に含めない)という扱いになります。


2-2 注意したいポイント

  • 非課税枠は、相続人が受け取る死亡保険金に限って適用されます
  • 相続人以外(例:孫、嫁、友人)が受け取る保険金には非課税枠は使えない
  • 非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」は、相続放棄した人も人数に含める(ただし放棄した人が受け取る分には非課税枠適用なし)

3. 受取人のパターンで課税関係が変わる

パターン① 受取人が相続人(配偶者・子など)

  • 税法上はみなし相続財産
  • 「500万円×法定相続人」の非課税枠を利用可
  • 非課税枠を超えた部分が相続税の課税対象

パターン② 受取人が相続人以外(孫・子の配偶者など)

  • 原則として非課税枠は適用されない
  • 受取人の所得として課税関係を整理する必要あり
  • 一見「相続税対策になりそう」に見えるが、別の税目やルールが関わることもあり要注意

パターン③ 契約形態が複雑な場合(名義変更・保険料負担者が別)

  • 契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、相続税・贈与税・所得税など、どの税目が関係するかが変わります
  • 実務では保険契約の控え+保険会社からの案内+税理士の判断で整理します

👉 行政書士としては、「契約形態の整理」までをおこない、具体的な税額判断は税理士にバトンを渡す形となります。


4. 保険金請求の流れと「時効」の考え方

4-1 保険金請求の基本的な流れ

  1. 生命保険会社に死亡の連絡
  2. 保険会社から請求書類一式が送付される
  3. 必要書類(死亡診断書、戸籍、住民票、保険証券など)をそろえて提出
  4. 保険会社が審査
  5. 受取人の口座に振込される

死亡保険金は、銀行口座とは違い「凍結されない」ため

  • 葬儀費用
  • 当面の生活費
  • 納税資金

などにすぐ充てられるメリットがあります。


4-2 保険金請求には「時効」がある

生命保険金の請求権には、保険法第95条で「行使できる時から3年」という時効が定められています。

  • 多くの場合は死亡日の翌日から3年
  • 簡易保険の一部など約款で5年としている例もあり、契約内容の確認が必要です

💡 ポイント

「昔の保険証券が後から見つかった」ケースでは、時効経過後でも保険会社側が柔軟に対応してくれることもあります。

あきらめずに一度は相談する価値があります。


5. 生命保険を相続でどう活用できるか

5-1 相続で得られること

  1. 現金がすぐに手に入る
    • 口座凍結の影響を受けない
    • 葬儀費・納税資金の確保に役立つ
  2. 非課税枠で税負担を軽減しやすい
    • 「500万円×法定相続人」はメリットあり
  3. 遺言と組み合わせて「想い」を伝えやすい
    • 例えば「介護をしてくれた子に多めに残したい」などの「想い」を保険金受取人の指定で反映することができます

5-2 行政書士がサポートできること

  • 生命保険の契約内容の整理(誰が契約者・被保険者・受取人か)
  • 相続財産全体の一覧表作成
  • 遺言書の作成サポート(保険とのバランスを考えた内容)
  • 遺産分割協議書の作成(保険金を踏まえた調整を言語化)

👉 一方で

  • 相続税・贈与税の具体的な計算
  • 申告書の作成・提出

などは税理士の独占業務になるため、必要に応じて税理士と連携していきます。


💬 よくある質問(Q&A)

Q1. 保険金は遺産分割協議に入れないでいいの?

→ 法律上は「受取人固有の財産」とされるのが原則ですが、兄弟間の公平感などを考え実務では遺産分割で調整材料として扱うケースがあります


Q2. 生命保険だけで相続税対策は十分ですか?

→ 生命保険はあくまで一つの手段です。

不動産・預貯金・事業資産とのトータルバランスで検討する必要があります。


Q3. 受取人の指定をしないままにしておくとどうなりますか?

→ 受取人を指定しない死亡保険契約では、通常は法定相続人が保険金を受け取ります。

死亡保険金は、遺産分割協議の対象にはなりませんが、相続税の課税対象となる「みなし相続財産」として扱われ相続人全体に課税される場合があります。

遺言書がなくても法定相続人が相続します。


Q4. 税理士に相談するタイミングはいつが良いですか?

  • 相続財産の概算が「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)」に近いまたは超えそうなとき
  • 生前贈与・保険・不動産が複雑にからんでいるとき

などは早めに税理士へ相談するのがおすすめです。


⭕✖️クイズ(クリックで答え表示)

【○✖️クイズ】生命保険と相続

Q. 生命保険の死亡保険金は、どんな場合でも「500万円×法定相続人の数」だけ自動的に非課税になる。

答え:✖️(バツ)

非課税枠が使えるのは、原則として「相続人が受け取る死亡保険金」の場合です。相続人以外が受け取る場合などには適用されないことがあります。

🏁 まとめ

  • 生命保険は、民法上は「受取人固有の財産」、相続税法上は「みなし相続財産」
  • 「500万円×法定相続人」の非課税枠は、相続人が受け取る死亡保険金にだけ適用される
  • 受取人の指定・契約形態で税務上の扱いが変わる
  • 保険金請求には時効(原則3年)があるので放置しないように
  • 行政書士は「全体整理」と「書面作成」、税理士は「税額判断・申告」という役割分担があります

「保険と相続の関係を整理したい」

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