【行政書士が解説】相続と不動産の関係|名義変更・売却・共有のリスクをやさしく解説(第13回)

相続の相談で多いのが、実家(不動産)をどうするかの問題 です。
- 名義変更しないまま放置している
- 売るか、誰かが住むかを決めきれない
- 兄弟で共有名義にしたけれど、その後の維持等が大変…
しかも、令和6年(2024年)からは相続登記が「義務化」されて、放置すると過料の可能性もあります。
この記事では
- 相続と不動産の基本ルール
- 名義変更(相続登記)の義務と期限
- 売却する場合または共有にする場合のメリット・デメリット
- 実務でよくある失敗パターン
をできるだけ専門用語を噛み砕いて解説します。
最後に Q&A と ⭕✖クイズがありますので、判断の参考にしてください。
1. 相続と不動産の基本ルール
■ 不動産も「相続財産」の一部
被相続人(亡くなった方)の名義になっている
- 土地
- 建物(自宅・アパートなど)
は、現金や預金と同じく「相続財産」です。
相続人は
- 誰が相続人なのか(法定相続人)
- どのような割合で相続できるか(法定相続分)
を前提に誰が、どの不動産を取得するかを遺産分割協議で話し合って決めることになります。
■ 名義が自動で変わるわけではない
相続が発生しても、不動産の名義(登記)は自動で書き換わりません。
- 相続人の間で分け方を決める
- 相続登記(名義変更)を申請する
という手続きが必要です。
2. 相続登記の義務化と期限【2024年施行】
令和6年(2024年)4月1日から不動産の相続登記は 「義務」 になりました。
✅ 義務化のポイント(不動産登記法の改正)
- 相続(または遺贈)で不動産を取得した相続人は、その事実を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務 がある
- 正当な理由なく放置した場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティ) の対象となる可能性が
👉 「知らなかった」「忙しかった」では済まされなくなりました。
3. まず決めるべきは「誰が不動産を取得するか」
名義変更・売却前にその不動産を誰が引き継ぐのか を決める必要があります。
選択肢としては、ほぼ次の3パターンです。
- 誰か1人が単独で取得して住み続ける
- 売却して代金を相続人で分ける
- 相続人の共有名義(持分)で所有する
それぞれメリット・デメリットがあります。
4. パターン別|メリット・デメリット
① 単独で取得する場合
メリット
- 将来の管理・修繕・売却の判断がスムーズにできる
- 「誰の意向で動くか」が明確に
デメリット
- 単独取得者の負担(固定資産税・維持管理費)が増える
- 他の相続人との 代償金(現金での調整)が必要 になることも
② 売却してからお金で分ける場合
メリット
- 「不動産を誰が持つか」で揉めにくい
- 将来の空き家・管理リスクが解消できる
デメリット
- 売却時期の判断(いつ・いくらで売るか)でもめることがある
- 感情的に「実家を手放したくない」という声が出やすい
③ 共有名義にする場合
相続人それぞれが “持分” を持つ形です(例:長男1/2、次男1/2)。
メリット
- 一見「平等」に見える
- とりあえずの着地点として決めやすい
デメリット(ここが重要)
- 将来、売却や建替えをするたびに共有者全員の同意が必要
- 共有者の1人が認知症になった場合などに手続きが止まる
- 次の世代(孫)に引き継がれると、共有者の数がさらに増えて収拾不能におちいる
👉 行政・法務の現場では、「安易な共有はトラブルのもと」として注意喚起されています。
可能であれば、単独取得+代償金、早めの売却を検討した方が子や孫への負担は小さくなります。
5. 相続登記の基本的な流れ
不動産の名義変更そのもの(登記申請)は 司法書士の業務 ですが、全体の流れは押さえておくと安心です。
- 相続人調査(戸籍収集)
- 相続財産調査(不動産の登記事項証明書など)
- 遺産分割協議(誰がどの不動産を取得するか)
- 遺産分割協議書の作成
- 必要書類を揃える
- 被相続人の出生〜死亡までの戸籍
- 相続人の戸籍・住民票
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書 など
- 被相続人の出生〜死亡までの戸籍
- 相続登記の申請(司法書士が代理する)
👉 行政書士としては、1〜4(戸籍収集・協議書作成・説明書類の整理) を中心にサポートします。
登記は信頼できる司法書士と連携する形がベストです。
6. よくある失敗パターン
❌ 「名義はそのままでいいよ」と言って放置
→ 相続登記義務化により、3年超の放置は 過料リスク+将来の手続きがさらに複雑化します。
❌ 兄弟3人で共有にしてしまう
→ 最初は問題なくても
- 各共有者の死亡 → それぞれの子どもへ持分が分散
- 誰か1人が認知症になる
- 連絡の取れない相続人が出る
結果として、売るにも何をするにも動けない状態に。
❌ 固定資産税だけ誰かが払って「実質その人のもの」という状態
→ 法的にはあくまで共有のままです。
支払っていた人にその分だけ多くもらえる権利が自動で生じるわけではない。
早めに協議&登記で整理しておく方が安全です。
7. 行政書士に相談するメリット
- 相続人・不動産の状況を整理して、「選択肢」をわかりやすく示せる
- 戸籍収集・相続関係説明図・遺産分割協議書をまとめて作成できる
- 司法書士・税理士・不動産会社などとの「窓口役」となり、手続きを一元的にコーディネートできる
👉 お一人で全部を抱え込むのではなく、早めにご相談ください。
👉 きりゅう行政書士事務所に相談する(初回相談無料・オンライン可)
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 相続登記をしないまま、住み続けるだけなら問題ありませんか?
→ 法律上は、相続登記をしなくてもただ「住む」こと自体は禁止されていません。
しかし、2024年からは相続登記が義務化されているため、3年を超えて放置するのはリスクが高い状態です。
売却・担保設定・建替えなどの場面でも必ず問題になります。
Q2. 共有名義にするのは絶対ダメですか?
→ 法律上は禁止されていませんが、長期的にはトラブルの火種になりやすいのが実務の感覚です。
どうしても共有にする場合でも、将来の売却や持分買取のルールを事前に決めておくことをおすすめします。
Q3. 相続登記は自分でできますか?
→ ご自身で登記はできます。
ただし、登記申請は必要書類・記載事項が多く、司法書士に依頼する方が安全・確実です。
行政書士としては、登記前の書類準備・協議書作成・司法書士との連携などをサポートします。
Q4. 売却するか、自分が住むか決められません…
→ 感情の部分が大きいテーマですので、「いきなり結論」ではなく、維持コスト(固定資産税・修繕費)・将来の利用予定・兄弟間の距離感などを整理して方向性を決めていくのが現実的です。
9. ⭕✖クイズ
Q. 相続で不動産を取得した場合、名義変更(相続登記)は義務ではなく、やってもやらなくてもよい。
答え:✖️(バツ)
令和6年(2024年)の法改正により、相続登記は「義務」となりました。 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
10. まとめ
「実家や土地(不動産)をどうするか」は、正解がひとつではありません。
ただし、放置しておくほど選択肢が狭くなっていきます。✅ 相続人・不動産の状況整理だけでも大歓迎です。
「うちの場合はどう考えればいい?」という方は、お気軽にご相談ください。👉 きりゅう行政書士事務所に相談する(初回相談無料・オンライン可)


