建設業許可が必要な人・いらない人|個人事業主・一人親方・工務店をケース別に解説【第2話】

「うちは500万円未満の工事しかやっていないので、建設業許可必要ないよね?」
「一人親方だけど、将来を考えたら許可を取っといた方がいいよね?」
建設業の現場では、許可が必要かどうかがハッキリしないまま仕事を続けているケースが少なくありません。
この記事では
- 建設業許可が 必要になるケース
- 逆に法律上は許可がなくてもよいケース
- 個人事業主・一人親方・小さな工務店の 典型パターン
- 将来を見据えた今から準備した方がいい人
を2025年時点のルールと法改正もおさえながら整理していきます。
建設業許可が必要かどうか判断する3ステップ
最初にチェックの順番を決めてしまうとラクです。
- その仕事は 「建設工事」 に当たるか?
- 金額・内容が 「軽微な建設工事」に収まっているか?
- 営業として反復継続して行っているか?
この3つを順番に見ていけば、法律上建設業許可が必要かどうかのおおまかな線引きができます。
ステップ1:そもそも「建設工事」に当たらないケースは許可不要
建設業法の対象になるのは、建設工事の完成を請け負う営業です。
つまり、次のような仕事は、原則として建設業許可の対象外です。
- 建設資材の 単なる販売(セメントや塗料を売るだけ など)
- 工事を伴わない 製造のみ・加工のみ
- ただの 運送業務(資材を運ぶだけ)
- 自分の家を自分で直す DIY(自家用で自分が施工するだけ)
ただし、DIYと言いながら他人から対価をもらって請け負うようなケースでは、請負工事と評価される可能性があります。
ステップ2:「軽微な建設工事」に当たるなら許可不要
第1話でも触れましたが、軽微な建設工事のみを請け負う場合は、建設業許可は不要です。
建築一式工事以外
- 電気工事、内装仕上工事、管工事、塗装工事など
→ 工事1件の請負代金(税込)が500万円未満 なら許可不要
建築一式工事
- 住宅・店舗・ビルなどを総合的に請け負う工事
→ 次のどちらかに該当すれば許可不要 - 工事1件の請負代金(税込)が1,500万円未満
- 延べ面積150m²未満の木造住宅工事(一定の条件あり)
ここで大事なことは
- 金額は「税込」で判断する
- 発注者の支給材の市場価格や運送費も含めるという点です。
ステップ3:「営業として」反復継続しているなら許可の対象
建設業法でいう「建設業」とは
建設工事の完成を請け負う 営業= 反復継続して対価を得る行為を指します。
- 1回きりの知り合いの手伝い(実費程度)
- 利益を目的としないボランティア工事
などビジネスとしての継続性がないものは、本来の建設業には当たりません。
ただし、税務・契約・保険の面があるのでグレーゾーンで稼ぎ続けるのはリスクが高いです。
ケース別:このタイプは建設業許可が「必要」「不要」「将来必要になりやすい」
ケース1:大工の一人親方
よくあるパターン
- 1〜2人で木造住宅の造作・リフォームを請け負う
- 1件あたり300万円前後の工事が多い
- 年間の売上はそこそこあるが、1件500万円超えはまだない
法律的には
- 今のところ、1件あたりの工事が税込500万円未満に収まっている間は許可不要。
- ただし、元請から「もっと大きい金額の工事をお願いしたい」や「公共工事の下請に入ってほしい」と言われ始めると、許可なしが足かせになります。
将来のために
- 「いつか500万円超えの工事もやりたい」
- 「自分で元請として家を建てたい」
と思っているなら、早めに許可取得の準備を始めることをおすすめします。
ケース2:小さな工務店(新築・リフォームを両方やる)
よくあるパターン
- 新築の請負もある
- リフォームや店舗改装もやっている
- 1件1,000〜2,000万円くらいの建築一式工事も受ける
法律的には
- 建築一式工事で 1,500万円以上(税込) の案件がある時点で、建設業許可が必要。
- 1,500万円未満でも150m²超の木造住宅などは許可が必要になるケースあり。
このタイプは、ほぼ確実に許可が必要です。
すでにそういう工事を受けているなら、無許可営業のリスクがないか早急にチェックすべきです。
ケース3:内装仕上・クロス業者
よくあるパターン
- マンションや店舗のクロス貼り替え
- 原状回復工事など
- 1件あたりの工事は20万〜300万円くらい
法律的には
- 1件の請負代金(税込)が500万円未満なら許可不要。
ただし、要注意なのが
- 元請から見れば、内装仕上工事業の許可を持っている業者に発注したい
- 公共工事や大手案件では必ず許可ありが条件ということです。
ビジネスを広げたい人は、早めに許可を取るメリットが大きい業種です。
ケース4:電気・管・設備業者(エアコン・給排水など)
よくあるパターン
- 一般家庭のエアコン工事、トイレ・キッチン・給湯器の交換
- 店舗やオフィスの設備工事
- 同じ施主から複数工事をまとめて受けることもある
法律的には
- 単発の工事が500万円未満でも、実質1件の工事を複数契約に分けて「500万未満」に見せているとアウトです。
- まとめて500万円を超える設備工事を行う可能性があるなら、許可を持って営業したほうが安全です。
ケース5:DIY・副業感覚でのリフォーム請負
パターン
- 本業が別にあって、休みの日に友人・知人の家を格安でリフォームしている
- SNSやマッチングアプリで「格安リフォームやります」と募集している
法律的には
- 自宅を自分で直すDIY → 許可不要
- 他人の家を有償で工事 → 請負契約であり、金額次第では建設業許可の対象になります。
「副業だから」「バイト代だから」といっても、反復継続して対価を得ていれば「営業」と評価されるリスクが高いので要注意。
よくあるQ&A|グレーゾーンでよく聞かれる疑問
Q1. 「500万円を超える工事は、工事が始まるまでに許可を取ればいい?」
A. ダメです。契約を結ぶ前に許可が必要です。
建設業法上は、建設工事の完成を請け負う営業をするには、契約締結の時点で許可を持っている必要があります。
工事が始まるまでに取ればよいは誤解です。
無許可で契約すると 無許可営業として罰則の対象 になり得ます。
Q2. 材料費は施主が全部買うので、うちは「作業代だけ」。その場合も500万円に入る?
A. 基本的には、支給材も市場価格で含めて判断します。
国交省のガイドラインでは、請負代金の額には取引に係る消費税および地方消費税を含むとされています。
発注者支給材の扱いについて実務では解釈の幅がありますが、材料は施主持ちだから500万円未満は非常に危険な考え方です。
Q3. 今は500万円未満しかやっていないけど、許可は不要のままで問題ない?
A. 今だけ見れば不要でも、将来の売上・取引先次第では早めに取っておいた方がお得なケースが多いです。
- 元請からの信頼を取りたい人
- 大手・公共工事に下請で入りたい人
- 単価の高い仕事にシフトしたい人
にとって、建設業許可は 「取れるなら早く取った方が仕事のチャンスが広げられるライセンス」 です。
○✖クイズ|あなたの感覚は法律とズレてない?
Q. 大工の一人親方Aさんは、普段は1件300万円前後のリフォーム工事しかしていない。
ある日、税込550万円のリフォーム工事を1件だけ受注することになった。
「1回だけだし工事が始まるまでに許可を取ればいい」と考えて、無許可のまま契約書にサインした。
——この判断は、建設業法上「問題ない」ので○である。
第2話のまとめ
- 建設業許可が必要かどうかは
①それが「建設工事」かどうか
②「軽微な建設工事」の範囲かどうか
③営業として反復継続しているかどうかの3ステップで考える。 - 一人親方・小さな工務店でも、500万円・1,500万円のラインを超える工事を受けるなら許可が必須です。
- 副業リフォーム・DIY感覚の仕事でも、対価を得て継続すれば「営業」と見なされる可能性がある。
- 「今は500万円未満だから大丈夫」でも、将来の売上・取引先を考えると早めの許可取得が有利なケースが多い。
許可が必要かどうかの判断は、専門家に任せてください
建設業許可は「500万円の壁」だけでは判断できません。
- 実質1件の分割契約
- 建築一式工事の特殊な基準
- 営業性(反復継続性)の判断
- 将来の業態変更の可能性
これらを踏まえて判断しないと、無許可営業リスクや機会損失につながることがあります。
行政書士があなたの事業内容・工事内容・将来の方向性を踏まえて最適な許可取得プランをご提案します。
次回予告
第3話:建設業許可の5つの要件をやさしく解説
─ 経営業務の管理責任者・営業所技術者・財産的基礎などをチェックしよう


