農地は時効取得できるのですか?

🙋質問
近所のBさんの農地を私Aが所有している農地だと30年以上思い込んでいて耕作もしていました。Bさんに相談したところ、当該農地を譲渡してもいいとの返事をいただきました。
この農地を時効で取得することはできますか?
📕答え
今回のケースでは、農地を時効取得することが可能だと思われます。
✅ポイント
①取得時効について
時効は、法律上の権利関係とは異なる事実の状態が長年続いた場合に、その長年続いた事実を尊重して法律上の権利関係に合わせる制度。
農地の所有権も時効が完成すれば取得が可能です。
(所有権の取得時効)
民法第162条 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
②Aさんのケース
Aさんは、何の支障もなくBさんの農地を耕作しているので「平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者」にあたります。
また、Bさんの農地をAさんが所有しているものと思って耕作していたので「善意」でもあります。過失があるかどうかは不明ですが、「30年以上耕作(占有)」しているとのこと。
したがって、取得時効が完成していると言えます。
③農地を時効取得する手続き
1.時効取得の手続き
(時効の援用)
民法第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
時効は「援用」することにより効果が発生します。
Bさんに時効により取得したことを意思表示する手続きが必要です。(例:訴訟、内容証明郵便など)
今回は、Bさんが「譲渡してもいい。」と言っています。本来時効取得に相手方の同意は不要ですが、近所なので同意を得ておくことが望ましいです。
2.農地法の申請は?
(時効の効力)
第百四十四条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
時効は、「原始取得」であり、権利移転ではないので農地法第3条1項の許可は不要です。
ただし、所有権移転登記等をしたときは、農業委員会に所有権を移転した旨の届出が必要になります。


