第8回:留学ビザから就労ビザへ変更する方法

要件・必要書類・申請の流れ・28時間ルールまで徹底解説【保存版】
日本の大学・専門学校を卒業(または見込み)して、留学(Student)から就労ビザ(代表例:技術・人文知識・国際業務)へ切り替えるときの合否の分かれ目は
- 学歴/実務と仕事内容の関連性、2) 報酬(日本人と同等以上)、3) 受入企業の実体・継続性。
この記事では、最新運用の考え方に沿って必要書類・時系列フロー・NG例と回避をわかりやすく整理します。
1. 【基礎】留学→就労ビザ変更の全体像
- 対象:日本に在留中の留学生が卒業・修了を経て、就労系の在留資格へ切り替える手続。代表格は技術・人文知識・国際業務(技人国)。
- 原則:許可が出るまで新しい就労(本業)はできない。(在籍中のアルバイトは別途「資格外活動許可」の範囲内でのみ可)
- 判断の軸:入管の審査は「該当性 → 基準適合性 → 相当性」の三段階(⬇️第6回参照)。
第6回:不許可になる主な理由5つ|入管の視点で考えてみる
なぜダメなのかを逆算で理解する ― 該当性・基準適合性・相当性の3軸から解説 在留資格申請が「不許可」になったとき、入管庁は感情ではなく明確な基準で判断しています。…
2. 【合否の要】許可要件チェックリスト
A. 学歴/実務と業務の関連性
- 学んだ分野(専攻)と就く職務のつながりを説明できるか
- 専門学校は、授業計画(シラバス)×職務タスクの対応がより重要
- 実務経験で補う場合は、年数や内容の証明を添付
B. 報酬(日本人と同等以上)
- 同職務の日本人と同等以上であること
- 地域・職務の相場に照らし妥当性を示す(社内同職比較も有効)
C. 受入企業の安定性・継続性
- 登記、決算(新設は契約・事業計画)、組織体制の実体があるか
- 会社“カテゴリ(1~4)”に応じて提出物が異なる(上位カテゴリは省略可)
D. 仕事内容は“専門業務が主”
- 接客・配膳・清掃等の単純作業が主と見なされない設計に
- 業務比率(主従関係)を数値で示す(例:専門80%:補助20%)
3. 【必要書類】本人側/会社側
本人側(共通)
- 在留資格変更許可申請書(最新版)
- 写真(4×3cm)
- パスポート/在留カード(原本提示)
- 卒業(見込)証明書・成績証明書(専攻が分かるもの)
- 履歴書/職務経歴書
- 雇用契約書(労働条件通知書)
- 職務内容説明書(JD):専門タスク・活用知識・指揮命令・業務比率を明記
会社側(所属機関)
- 登記事項証明書・会社案内・組織図
- 決算書(新設は契約書・受注書・資金計画 等)
- 法定調書合計表(カテゴリ判定の根拠)
- (任意)就業規則/36協定届/社保加入の証跡
ワンポイント:カテゴリ1・2は、省略可の書類が増える。3・4(中小・新設)は、資料を厚めにが基本。
4. 【時系列】内定〜入社までのフロー(卒業前後)
卒業前に内定→卒業後入社(一般的)
- 内定 → 2) 雇用契約 → 3) 変更許可申請 → 4) 許可 → 5) 入社・就労開始
- 申請は、卒業見込み時期に合わせて早めに準備
- 許可が出るまで本業の就労開始は不可
卒業前に内定+長期インターン併用
- 留学在留中は、資格外活動許可の範囲(原則28h/週)でのみ可
- 本格就労は、変更許可後に開始
卒業後に就職活動が続く場合
- 特定活動(就職活動)への在留変更を検討(学校推薦・大学等の要件あり)
- 期間内に内定→上記フローへ
5. 28時間ルールと就労開始のタイミング
- 留学在留中のアルバイトは、包括許可がある場合で28時間/週が上限(長期休業中は別枠)。
- 就労開始は、変更許可が出てから。内定・契約だけでは働けない。
- 境界が曖昧なときは、個別許可や学校・会社の運用を確認(⬇️第4回参照)。
6. よくある不許可パターン5つと回避策
| パターン | つまずき | 回避策 |
|---|---|---|
| 専攻と職務がつながらない | 「経営学→厨房補助」など | 関連性マップで授業→タスク→知識活用を可視化 |
| 単純労働が主に見える | 接客・配膳が多い設計 | JDと比率表で専門8割以上を明示 |
| 給与が同等以上と言えない | 相場・社内比較なし | 職種×地域の相場資料、社内同職比較を添付 |
| 会社の実体が薄い | 新設/赤字で資料不足 | 登記・契約・資金計画・組織図で補強 |
| 28h超過や届出遅延 | 相当性で不利 | 週次シフト管理・理由書・今後の遵守計画を提出 |
7. 事例で学ぶ:業界別の“該当性”設計
ホテル・観光
- ❌:フロント接客・配膳が中心
- ⭕:海外顧客向け企画・販路拡大・多言語CS設計を主業務に(接客は補助)
小売・外食
- ❌:レジ・配膳・清掃中心
- ⭕:海外仕入/越境EC運用/商品ページ多言語化/販促分析を主業務に
ITエンジニア
- ⭕:要件定義/設計/実装/運用(自然科学系の知識活用)
- 書き方のコツ:具体タスク×ツール(例:SQL・Pythonでデータ前処理→BI可視化)
8. コピペで使えるテンプレ
8-1. 「専攻×職務の関連性」説明テンプレ
私は、〇〇大学△△学部で□□を専攻して(授業・研究)でAAA/BBB/CCCを学びました。
入社後は、(職務)でこれらの知識を(具体タスク:例:需要予測、契約書英訳、UI設計)に活用します。
例えば、(授業名)で習得した(スキル)は、(業務場面)で(期待される成果)に直結します。
8-2. JD(職務内容説明書)テンプレ
- 職種名:____
- 主たる業務(専門):
- 例)要件定義、データ分析(SQL/Python)、ダッシュボード設計(Power BI)
- 活用する知識:情報工学/統計学/アルゴリズム
- 補助業務:会議資料作成・庶務
- 業務比率:専門80%|補助20%
- 指揮命令系統:上長__、体制図添付
- 雇用条件:正社員/月給__円(同職日本人と同等以上)
8-3. 業務比率表(主従関係の明示)
| 業務項目 | 割合 | 区分 |
|---|---|---|
| データ分析・モデル設計 | 45% | 専門 |
| ダッシュボード開発 | 35% | 専門 |
| 会議資料作成 | 10% | 補助 |
| 一般庶務 | 10% | 補助 |
9. Q&A(よくある質問)
Q1. 卒業見込みでも申請できる?
→ できます。卒業(見込)証明書を添付し、許可後に就労開始します。
Q2. 内定が出たらすぐ働いていい?
→ 不可。 変更許可が出てから本業就労を開始します(留学中は資格外活動の範囲のみ可)。
Q3. 専門学校卒でも大丈夫?
→ 可能。授業内容と職務タスクの具体的対応(シラバス等)を丁寧に説明しましょう。
Q4. 新設会社でも通る?
→ 可能。登記・契約・資金計画・体制図などで実体と継続性を補強してください。
Q5. 28時間を超えてアルバイトしていた…
→ 相当性で不利。事情説明と今後の遵守計画を示し、他の立証(出席・成績・評価)を厚めに。
10. まとめ
- 関連性・報酬・企業実体の3点が合否の肝。
- 書類は、「該当性→基準→相当性」の順にまとめると審査官に伝わる。
- 変更許可が出るまで本業就労は不可、在学中は28時間ルールを厳守。
- 専門家(行政書士)は、「設計(JD・比率表)×証拠(証明書類)」でロジックを可視化するのが役割。


