[行政書士が解説]宅地建物取引業免許の要件とは?事務所・専任の宅地建物取引士・欠格事由をやさしく整理(第2話)

「宅地建物取引業(以下、宅建業)の免許を取りたいけれど、何からすればいいのか分からない」

「自宅で開業したいけれど、事務所として認められるのか不安だ」

宅建業の免許は、

  • 事務所の要件
  • 専任の宅地建物取引士(以下「専任宅建士」)
  • 欠格事由(免許が下りない要件)

などのいくつかのポイントを押さえていれば、手続きの流れは難しくありません。

第2話では、宅建業免許の基本3本柱を実務の目線から分かりやすく整理します。


1. そもそも宅建業免許が必要になるケース

宅建業法上の「宅建業」とは、簡単にいうと

宅地や建物の売買・交換・賃貸の 「取引の代理・媒介」反復継続して 報酬を得る目的で行うこと。👉国土交通省

⬇️第1話で詳しくまとめてますのでご覧ください。

【行政書士が解説】宅地建物取引業とは?許可が必要なケース・不要なケースを徹底解説【第1話】

「不動産の仕事を始めたい」「副業で賃貸仲介を考えている」そうした相談で最初に確認するのが 許可が必要かどうかです。 宅地建物取引業(以下、宅建業)の許可は「反復…

免許が必要な典型例

  • 不動産仲介業(売買・賃貸の仲介)
  • サブリース業で第三者との賃貸借契約を仲介する場合
  • 投資用ワンルームの販売会社 など

免許が不要なパターン(例)

  • 自分の持っている不動産を自社の資産として売るだけ(自己所有物の単発売買のみ)
  • 管理会社として賃料集金や清掃だけ請け負う(取引の代理・媒介をしない)

「代理・媒介」と「単なる管理・所有」の線引きがポイント。


2. 宅建業免許の「3本柱」

宅建業免許を取るうえで、全国共通で重要なのは次の3点です。(許可基準は、各都道府県によりローカルルールがあるのです)

  1. 申請者自身の要件(欠格事由がないこと)
  2. 事務所の要件(独立性・継続性があること)
  3. 専任の宅建士の設置(5人に1人以上・“専任性”)

順番にみていきます。


3. 申請者の要件(欠格事由)

宅建業法第5条では、いわゆる「免許が下りないケース(欠格事由)」が定められています。👉住宅政策決定サイト

代表的なものをかみ砕いて整理すると:

主な欠格事由のイメージ

  • 破産して復権していない人
  • 過去に宅建業免許を取り消されてから、一定期間(5年など)が経過していない
  • 宅建業法違反などで禁錮以上の刑 や一定の罰金刑を受けてから5年以内である
  • 暴力団員、または暴力団と一定の関係があると判断される場合
  • 重要な事項について虚偽の申請をした者 など

法人の場合は、「会社」だけでなく、役員・政令使用人も含めて 欠格事由に該当しないことが求められます。

✅ 行政書士としては、代表者・役員の履歴や過去の免許状況を事前に確認します。


4. 事務所の要件:自宅・レンタルオフィスは使える?

宅建業免許でつまずきやすいのが「事務所要件」です。

4-1. 宅建業法上の「事務所」とは?

宅建業の事務所は、継続的に宅建業の業務を行う拠点 であることが必要です。

主なポイントは:

  • 独立性・専有性があること
    • 他の部屋と明確に区切られている(壁やドアで区画)
    • 単なるオープンスペースやカフェの一角では不可
  • 宅建業者票・報酬額表を掲示できること
  • 電話・FAXなどの連絡手段があること
  • 専任の宅建士が常駐できる環境であること

4-2. 自宅兼事務所の場合

自宅を「宅建業の事務所」として使うことは、条件を満たせば可能 とされるケースがあります。

ポイントの例:

  • 自宅部分と事務所部分が明確に区分されている
  • 玄関から事務所まで居住スペースを通らずに入れる動線
  • 事務所として専用の部屋がある(家族の生活スペースと混在しない)
    など。

設計によって判断が分かれるため、図面や写真をもとに事前に所管部署へ相談しておくと安心です。

4-3. レンタルオフィス・シェアオフィス

  • 単なる共有スペース・ブース型席などは、独立性がないとして認められないことが多い
  • 一方、完全個室型のレンタルオフィス
    • 施錠可能な専用個室
    • 郵便ポストや表示スペースあり
    • 継続的に使用できる契約

      などの条件を満たせば、事務所として認められる可能性があります。

🔍 実務では、各都道府県が出している「免許申請の手引き」で事務所要件を必ず確認しておくことが重要です。


5. 専任の宅地建物取引士の設置義務

宅建業者は、事務所ごとに「専任の宅建士」を一定数置く義務があります。

5-1. 必要人数の目安

  • 事務所における「業務に従事する者」の 5人に1人以上 が専任の宅建士であること

例:

  • 従事者5人 → 専任宅建士 1人以上
  • 従事者11人 → 専任宅建士 3人以上(端数切り上げ)

5-2. 「専任」の意味

国土交通省の「宅建業法の解釈・運用の考え方」では、専任とは、概ね次の状態を指します。👉国土交通省

  • 事務所に常勤している(通常の勤務時間を勤務)
  • 原則、その事務所の宅建業に専ら従事している

近年は、IT重説やテレワークの活用も進んで一定の条件のもとでリモート勤務との両立も認める方向でガイドラインが改正されています。👉東京宅建協会

5-3. 代表者が専任の宅建士になるケース

  • 個人事業主や、宅建士資格を持つ代表取締役が自ら専任宅建士となることも可能です。

ただし、他業種との兼業や別会社の役員などを兼ねる場合は、「専任」といえるかは業務量・勤務実態の確認が必要になります。


6. 宅建業免許チェックリスト(準備段階で確認)

申請前に最低限次の点を確認しておくとスムーズです。

✅ 申請者・役員等に欠格事由はないか

  • 過去の免許取消、刑事罰、暴力団関係など

✅ 事務所の要件を満たしているか

  • 独立したスペースか
  • 宅建業者票・報酬額表を掲示できるか
  • 電話・FAX・PCなど最低限の設備はあるか

✅ 専任宅建士の人数・配置は足りているか

  • 従事者数との比率(5人に1人以上)
  • 他の会社との兼務になっていないか
  • 勤務実態として専任性を説明できるか

行政書士としては、「申請書類が整っているか」だけでなく、実態が要件を満たしているかどうか を事前にチェックしていきます。


7. よくある質問(Q&A)

Q1. 自宅の一室でも宅建業の事務所として認められますか?

A. 条件を満たせば可能です。

ただし、居住スペースと混在していると問題になることが多く

  • 事務所専用の部屋か
  • 動線が独立しているか(玄関から直接入れるか)

    など各都道府県の基準で判断されます。

Q2. バーチャルオフィスの住所で免許は取れますか?

A. 出来ません。

実際の事務所として機能している物理的な場所が必要で住所貸し・郵便受けだけのオフィスでは、「事務所の実体がない」と判断されます。


Q3. 専任宅建士はアルバイトでもよいですか?

A. 雇用形態ではなく、「専任性」が大事です。

パート・アルバイトでも

  • その事務所に常勤し
  • 宅建業に専ら従事している

    のであれば、専任宅建士として認められる余地があります。👉国土交通省

Q4. 行政書士事務所と宅建業を同じ場所でやっても大丈夫?

A. 条件付きで可能ですが、注意が必要です。

行政書士業務と宅建業務を同一事務所で兼業する場合

  • 宅建業の事務所としての独立性
  • 専任宅建士の専任性(他業務との兼務の程度)

    が問題になります。

    ガイドラインに沿って、業務量や実態を説明できるようにしておくことが重要です。👉国土交通省

8. 【○✖️クイズ】自宅兼事務所について

【○✖️クイズ】自宅兼事務所の可否

Q. 自宅の一室であれば、必ず宅建業の事務所として認められる。

9. まとめと次回予告

今回のポイント

  • 宅建業免許は

    ① 申請者に欠格事由がないこと

    ② 「事務所」として実体のある拠点があること

    ③ 専任宅建士を適切に配置していること

    が基本の3本柱。
  • 自宅・レンタルオフィスを使う場合は、独立性・専有性・継続性 がキーワード。
  • 行政書士は、「書類が揃っているか」だけでなく、実態が要件を満たしているかを一緒に確認していきます。

宅建業許可のご相談はこちら

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などご不明な点はお気軽にお問い合わせください。

行政書士がわかりやすくサポートします。

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