🎁【行政書士が解説】生前贈与と相続の関係をわかりやすく|いつ贈る?どこまでが相続対象?【第6回】

「生きているうちに子どもへ財産を渡しておけば、相続税はかからない」
そう思っている方は注意してください。
実は、生前贈与も相続の対象になるケースがあり、タイミングや手続を間違えると節税どころかトラブルや課税の原因になります。
この記事では、行政書士の視点から「生前贈与と相続の関係」をわかりやすく解説します。
⚖️ 1. 生前贈与とは?
生前贈与とは、生きている間に無償で財産を譲る行為です。(民法549条)
「相続の前倒し」ともいわれており、財産の分散・トラブル防止に役立ちます。
ただし、相続との関係で贈与の時期・目的・税制が重要になってきます。
参考:民法(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
📅 2. 相続との関係:「7年ルール」に注意(相続税法第19条)
令和5年度税制改正により、2024年1月以降の相続については相続前7年以内の贈与財産が原則相続財産に加算されます。
| 改正前 | 改正後(2024年1月〜) |
|---|---|
| 相続開始前3年以内の生前贈与 | 相続開始前7年以内の生前贈与(段階的に延長されます。2027年1月より7年) |
| 対象:被相続人からの生前贈与 | 対象:被相続人からの生前贈与 |
| 対象者:相続人、受遺者、生命保険金等の受取人 | 対象者:相続人、受遺者、生命保険金等の受取人 |
💬 つまり:
「7年前にあげた財産」も相続の対象として再計算されることになります。
相続対策としては「長期的な計画」が欠かせません。
🏠 3. よくある誤解と注意点
| 誤解 | 実際の扱い |
|---|---|
| 贈与したから相続とは関係ない | → 相続開始前7年以内なら加算される |
| 贈与税を払えば相続税は関係ない | → 両方課税される場合あり(通算課税) |
| 現金なら記録が残らない | → 銀行履歴で簡単に確認可能。贈与契約書を締結することが重要 |
| 年110万円以内なら何回でも非課税 | → 同一人物に対して年間110万円まで。超えたら贈与税対象 |
💬 行政書士アドバイス
「通帳での振込+贈与契約書を締結」が鉄則。
「あげたつもり」「もらったつもり」では税務上認められません。
💴 4. 贈与税と相続税の関係
| 種類 | 内容 | 非課税枠(主なもの) |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 毎年110万円までは非課税 | 年110万円/人 |
| 相続時精算課税 | 贈与時に申告して相続時に合算 | 2,500万円まで非課税(累計) |
| 教育資金贈与 | 1,500万円まで非課税(一定条件) | 30歳未満の方が利用可 |
| 結婚・子育て資金贈与 | 1,000万円まで非課税 | 18歳以上から50歳未満まで利用可 |
📌 ポイント
- 相続時精算課税は、2,500 万円を超えた部分の贈与税は相続税の前払い制度であり、節税対策とないにくいので注意が必要。
- 暦年贈与と併用できる制度もあるが、申告要件を誤ると無効になるケースも(税理士へ相談を)。
⚠️ 5. 生前贈与がトラブルになるケース
| ケース | 問題点 | 対応策 |
|---|---|---|
| 長男にだけ多額を贈与 | 他の相続人が不満を持つ | 贈与契約書+遺言書で意図を明記 |
| 同居している子に家を贈与 | 他の兄弟が「不公平」と主張 | 評価額を記録しておく |
| 預金を名義変更しただけ | 実質的に贈与ではなく被相続人の財産扱い | 名義預金と見なされ課税対象に |
💬 行政書士の実務コメント
生前贈与は、相続の準備であり相続逃れではありません。
公平さと記録を残すことが家族円満のカギです。
📘 Q&A
Q1. 生前贈与と相続放棄は関係ありますか?
→ 直接はありませんが、相続放棄しても過去の生前贈与が無効になるわけではありません。
Q2. 相続人以外(孫など)に贈与しても7年ルールは適用されますか?
→ 現行法では、相続人、受遺者、生命保険金等の受取人が対象です。
Q3. 贈与契約書は自筆でもいい?
→ 可能です。
ただし、日付・署名・印鑑・贈与財産の内容を明記して各自保管しましょう。
Q4. 生前贈与をしたら遺言はいらない?
→ いりません、は誤りです。
遺言で「誰に・何を・どれだけ渡したか」明記することで贈与の意図が確認でき、トラブル防止になります。
🔵 ○✖️クイズ
Q. 相続開始の7年前にした贈与も、相続財産として扱われる場合がある。
📩 行政書士への相談のすすめ
生前贈与は、相続、税金・家族関係が複雑に絡む分野です。
行政書士は、
- 贈与契約書・確認書の作成
- 相続・遺言との整合性チェック
- 税理士や司法書士との連携サポートを通じて「失敗しない相続準備」をお手伝いします。
🧭 次回予告
▶ 第7回:「相続放棄と限定承認の違い」
相続は「受け取らない」という選択もできます。
次回は、相続放棄・限定承認・期限(3ヶ月ルール)についてわかりやすく解説します


