【行政書士が解説】特別受益と寄与分をわかりやすく解説|もめない相続の基礎知識(第9回)

相続の相談でよく出てくるのが
「生前にあの子だけ援助されていた」
「私だけ長年介護してきたのに評価されないの?」
という“特別受益”と“寄与分”の問題です。
これらは民法で定められた制度であり、相続人同士の公平を図るための重要な仕組みです。
しかし、用語が難しく誤解が多い分野でもあります。
この記事では、行政書士が最新法令と実務の考え方に基いて、読者の方にもわかりやすく整理しました。
後半には 、Q&Aと1問クイズ も用意していますので、実践的な理解に役立ててください。
🧭 1. 特別受益・寄与分とは?
■ 特別受益とは
相続人のうち特定の人が、生前に「特別の利益」を受けた場合にその分を相続分で調整する制度です。
(民法903条)
例:
- 住宅購入資金の援助
- 結婚支度金
- 開業資金
- 特別な教育費(海外留学など)
■ 寄与分とは
ある相続人が被相続人の財産形成・維持に特別の貢献をした場合、加算される増加分。
(民法904条の2)
例:
- 長期の無償介護
- 無給での事業手伝い
- 資金提供
- 療養看護
🧭 2. 特別受益はどう判断されるの?
✔ “特別の利益” に該当するか
扶養義務の範囲にある通常の生活費・学費等は特別受益にならない。
特別受益になりやすい
- 持ち家購入の頭金・全額の援助
- 特別な学費(海外の大学入学など)
- 事業資金の補助
なりにくい
- 散発的な生活費
- 大学の通常範囲の学費
✔ 婚姻・独立のための財産は原則チェック
ただし「いくら以上なら該当」という数字基準は存在しない。
🧭 3. 寄与分の判断ポイント
✔ 寄与分は認められるためのハードルが高い
実務では次の4つの要件が重要。
- 無償性
介護を「当然の扶養義務の履行」と見られれば寄与分にならない。
無償の貢献と評価される必要があります。 - 特別性
一般的な扶養を超えた、専門性や負担の大きな特別な貢献(医療・介護の専門的な行為)は認められやすい。 - 期間の長さ
5〜10年以上の継続的な貢献があると強い。 - 証拠の存在
日誌、送金記録、診断書、関係者の証明などの客観的証拠。
🧭 4. 相続分の計算はどう変わる?
特別受益の例
- 相続財産:3,000万円
- 子A・子B(各1/2)
- 子Aは生前1,000万円受けていた場合
計算:
みなし財産=3,000万円+1,000万円=4,000万円
子Aの相続分=2,000万円
子Aは生前1,000万もらっている → 実際に取得するのは子Aは1,000万円、子Bは2,000万円
寄与分の例
- 相続財産:3,000万円
- 子A、子B(各1/2)
- 子Aの寄与分は600万円と認定
計算:
基礎財産=3,000万円−600万円=2,400万円
子A、子Bの相続分は各1,200万円
Aは寄与分600万円を加算 → 1,800万円
🧭 5. 行政書士ができること
- 特別受益・寄与分のヒアリング
- 事実関係の整理
- 相続関係説明図の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 証拠の揃え方のアドバイス
- 税理士(相続税の申告)・司法書士(不動産の相続登記)との連携窓口
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🧭 6. よくある質問(Q&A)
Q1. 学費は特別受益になりますか?
→ 通常の範囲ではならない。
海外留学など高額・特別性があれば該当する場合があります。
Q2. 介護は何年続ければ寄与分になりますか?
→ 明確な年数基準なし。
ただし5〜10年など長期継続+無償+専門性で判断されやすい。
Q3. 証拠がほとんどない場合は?
→ 特別受益・寄与分ともに認定は困難になります。
証拠集めが重要です。
Q4. 話し合いで合意すれば家裁に行かなくてもいい?
→ もちろんOK。
合意書(遺産分割協議書)に記載すれば有効になります。
🧭 7. 1問クイズ
【相続クイズ】寄与分として最も認められやすいのは?
① 食費の負担を少し手伝った
② 家の片付けを月1回行った
③ 10年以上、無償で介護を続けた
長期間・無償・専門性が高い介護は寄与分の典型例として認められやすい事例です。
🧭 8. 次回予告(第10話)
第10話:遺産分割協議の進め方|揉めないための実務ポイント
- 協議前に絶対やるべき5つ
- 揉めやすい典型例
- 協議書の作り方
- 行政書士が関われる範囲
- 失敗しないポイント


